ユーロでイングランドがイタリアに敗れた理由。両チームにはどんな差があったのか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuter/AFLO

 イングランドには、決勝戦を含めた全7試合中6試合をウェンブリーで戦うという、ホームの利も加わっていた。だがそれは、「絶対に負けられない戦い」に陥る危険も孕んでいた。ブックメーカー各社の予想も輪を掛けた。わずかながら、軒並みイングランド優位の立場を取っていた。

 イングランド対イタリアは、W杯とユーロで過去4度しか対戦がないと述べたが、つけ加えれば、その成績はイタリアの4戦4勝(1PK勝ちを含む)だ。さらにW杯予選では4度の対戦があるが、ここでもイタリアが2勝1敗1分けと勝ち越している。

 イングランドがイタリアに勝ったのは1977年11月のW杯予選。ケビン・キーガンとトレバー・ブルッキングのゴールで、2-0と勝利したウェンブリーでの一戦が最初で最後になる。ところが、その一方でブックメーカー各社は、イングランド有利と予想する。そこでガレス・サウスゲート監督はどう出るか。

 なにより布陣に注目が集まった。というのも、この大会でサウスゲートは、4-2-3-1と4-3-3、それに3-4-3という3種類の布陣を用いて戦ってきたからだ。3-4-3を用いたのはドイツ戦。サウスゲートには、最大の難敵相手に守備的な3-4-3で対抗したという"前科"があった。イタリアは、ネームバリューではドイツとともに双璧をなす強豪だ。3-4-3でいくのではないかという読みは、あらかた当たった。実際は、3-4-「3」というより、「3」の両サイド、メイソン・マウント、ラヒーム・スターリングが閉じ気味に構える、さらに守備的な3-4-2-1だった。

 後から振り返れば、先制点が開始3分という早すぎる時間帯だったことも、イングランドの守備的精神に拍車をかけた気がする。

 先制点そのものは、攻撃的なサッカーから生まれた産物だった。キーラン・トリッピアーが、右からアシストとなるクロスボールを上げようとしたとき、右CBのカイル・ウォーカーはその外側を走ることで、イタリアのディフェンスを混乱させた。その動きにつられ、トリッピアーに対峙したジョルジオ・キエッリーニと、ウォーカーに対峙したエメルソン・パルミエリは後退。トリッピアーはほぼフリーの状態でクロスボールを送り込むことに成功した。

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