2021.07.10

イングランドのケインが見せた「謎の感覚」。ゴール前で意外な器用さを発揮する

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 ケインはキープ力も抜群で、そこでも体の大きさとリーチをうまく使う。キレのあるフェイントはないし、とくに何もしていないように見えるのにキープできるのは、タックルされそうな瞬間にはボールと相手の間にスッと足を移動させてボールを守るからだ。

 相手は足を出すのをやめるか、そのままタックルすればケインの足に当たってファウルになる。

<3人目のライン間担当>

 ユーロの強豪国で、フォーメーションや可変の仕方はそれぞれだが、敵陣に攻め込んだ時の人員配置は、ほぼ同じである。

 サイドに幅をとる選手、そして相手MFとDFのライン間でパスを受けられる選手を、2人ずつ配置している。これに前線に張る1人を加えた5トップのような形だ。

 幅をとる役はチームによって2人ともサイドバックだったり、1人はウイングだったり。これに関してはさほど人を選ばない。一方、ライン間担当は明確に資質が問われる。

 ごく限られたスペースにタイミングよく潜り込み、ごく限られた時間でボールをコントロールしてアイデアと技術を発揮できる。そういう選手はそんなにいないのだ。

 イタリアならロレンツォ・インシーニェとニコロ・バレッラがライン間担当だ。フランスはアントワーヌ・グリーズマンしかいなかった。ドイツも2人揃えたつもりだったが、カイ・ハフェルツしか機能していなかった。ベルギーはケビン・デ・ブライネとエデン・アザールだが、2人揃った試合は限られていた。スペインには、ペドリとダニ・オルモがいた。

 イングランドはスターリングとメイソン・マウントがライン間担当だが、例外的に3人目としてケインがいる。およそ小柄で機敏な選手が占めるライン間担当のなかで、ケインは異質と言える。

 体は大きいけれども、大きなスペースを必要としない。判断を変えられる幅のあるボールタッチとともに、相手と相手の間へ入り込むタイミングがうまい。