イングランド「負け犬魂」払拭。難攻不落のDFを武器に25年前のリベンジへ (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 惜しむらくは、1点ビハインドで迎えた延長後半を4−4−1で戦わなければならなかったことだろう。負傷したイェンセンが延長ハーフタイムに退いたことで、すべてのカードを切っていたヒュルマン監督も、さすがにお手上げ状態となってしまった。

 いずれにしても、この試合の前半30分に直接FKでスーパーショットを突き刺した21歳のミッケル・ダムスゴーを筆頭に、多くのサプライズを提供してくれたデンマークが今大会の主役のひとつだったことに変わりはない。まさに"オールアウト"と言うにふさわしい散り際も、好感度抜群だった。

 ただ、120分の激闘を振り返れば、勝者に値したのはイングランドであったことは間違いない。

 ガレス・サウスゲート監督率いる今大会のイングランドは、大会随一と言えるディフェンス力が最大の強み。事実、この試合で喫した直接FKによるゴールがこれまで唯一の失点で、それ以外に流れのなかから許した決定機さえなかった。準々決勝までの5試合をすべてクリーンシートで勝ち上がった安定感は、準決勝の舞台でも証明されたわけだ。

 際立っているのは、バック4だ。ハリー・マグワイアとジョン・ストーンズのCBコンビは強さとクレバーさを兼備し、右SBカイル・ウォーカーのスピードあふれるカバーリングは相手のカウンターを封じ、その分、左SBのルーク・ショーは思う存分に持ち味である攻撃力を発揮できる。

 彼ら4人に加え、これまで展開力など攻撃面の貢献が目立っていたボランチのデクラン・ライスとカルバン・フィリップスも、このデンマーク戦では高い守備能力があることを再認識させられた。それも含めて、この6人が形成する砦は難攻不落と言っていいだろう。

 攻撃陣では、グループステージから絶好調のスターリングがラッキーボーイ的存在となり、エースのハリー・ケインも決勝トーナメントに入ってからしり上がりに調子を上げ、気づけば4ゴールを量産。自力突破で変化をつける右ウイングのブカヨ・サカ、前線でアクセントをつけるメイソン・マウント、バックアップにもジャック・グリーリッシュ、フィル・フォーデンら充実の駒が揃う。

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