イタリア対スペインの激闘に見た欧州サッカーの神髄。PK戦勝利はイタリアへのご褒美かもしれない (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

◆ユーロでイタリア代表が「全力国家斉唱」。選手たちが気合が入りまくりの理由

 続く2010年南アフリカW杯、2012年ユーロと、国際舞台で3連覇を達成し、黄金時代を築いたわけだが、もし2008年の準々決勝でイタリアにPK負けしていたら、スペインに黄金時代は到来しただろうか。PK戦が抽選に代わる手段として始まった経緯を踏まえると、その勝利というのは、幸運そのものだ。PK戦を天の配剤とするならば、スペインの今回の敗戦は、順番通りの結果と捉えるべきかもしれない。

 客観的に見て、勝利に値するサッカーをしたのはスペインだった。しかし一方でイタリアも、かつてのように5バックで守り倒そうとしたわけではない。痛くもないのに、ピッチに倒れ込み、時間を稼ごうとしたわけでもない。延長後半に入ってもゴールを奪う姿勢を見せていた。PK勝ちは、そうした非守備的サッカーを展開したイタリアへのご褒美なのかもしれない。

 いずれにしても好勝負だった。名勝負の域には達しないが、欧州サッカーの真髄を見るようなハイレベルな、伝統を感じさせる一戦だった。なにより両国のお国柄、サッカーの色が、ピッチ上によく反映されていた。フランス、ドイツ、イングランドなど、代表選手が多民族化する傾向を示す中で、スペイン、イタリア両国は、よくも悪くも、その流れとは異なる構成だった。スペイン人らしさ、イタリア人らしさを存分に漂わせる、言ってみればクラシカルなサッカーを展開した。それが、筆者の目には逆に新鮮に見えたのだった。

 決勝戦。注目すべきはイタリアが、イングランドあるいはデンマーク相手に、どこまで攻撃的サッカーを披露できるか、だ。強みは、使える駒を多く揃えていることにある。グループリーグの段階から、マンチーニ監督は決勝進出を見据えているかのように、多くの選手を起用してきた。登録メンバー26人中、第3GKアレックス・メレト(ナポリ)以外の25選手を、グループリーグが終了した段階で、ピッチに送り込んでいる。前回2016年のユーロを制したポルトガルのフェルナンド・サントス監督を彷彿させる、短期集中大会に適した采配を振っている。結果はいかに。楽しみである。

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