イタリア対スペインの激闘に見た欧州サッカーの神髄。PK戦勝利はイタリアへのご褒美かもしれない (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

 ダニ・オルモ、さらには弱冠18歳のペドリ(バルセロナ)が、そこで卓越した足技を発揮した。前半の支配率はイタリア39%イタリア対スペイン61%。振り返るならば、スペインはマイペースを維持するこの関係に、安心してしまったのかもしれない。

 下馬評で勝っていたのはイタリアだ。決勝トーナメント1回戦終了時までは、スペインがイタリアに対して優位に立っていたが、準々決勝で、イタリアが世界ランク1位のベルギーを下し、スペインがスイスに苦戦(延長PK勝ち)すると、両者の関係は逆転した。

 スペインは、イタリアにゲームをコントロールされるのではないかという不安を抱きながら、この試合に臨んだのではないかと思われる。その心配が杞憂に終わったことに、満足したのではないか。パス回しに酔いしれた感、なきにしもあらずだった。

 攻めるスペイン対守るイタリアという構図は、よく考えれば、従来と同じだった。攻撃的サッカーに変身したとはいえ、イタリア人選手はもともと、劣勢を苦にしない気質を備えている。精神的には、むしろ優位な立場にあったとさえ思われる。後半15分、イタリアの右ウイング、フェデリコ・キエーザ(ユベントス)が叩き出した先制点には、高い必然性を覚えるのだった。

 1-0でリードという展開にめっぽう強いイタリア。その逃げ切りなるかに焦点が集まるなか、スペインは失点の直後、モラタを投入した。すると後半35分、そのモラタが、同点弾をゲットする。ピッチの中央を好調ダニ・オルモとの技巧的なワンツーで鮮やかに抜け出すと、左足でイタリアゴールに冷静に流し込んだ。

 モラタとダニ・オルモ。だがこの2人が、1-1のまま延長戦を経て行なわれたPK戦で、揃って失敗する展開になるとは......。

 スペインとイタリアは2008年、ウィーンのエルンスト・ハッペルで対戦したユーロの準々決勝でも、PK戦に及んでいる。勝ったのはスペインで、その余勢を駆り、準決勝でロシア、決勝でドイツを破り、欧州一に輝いた。

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