ユーロでイタリア代表が「全力国家斉唱」。選手たちが気合が入りまくりの理由 (2ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • photo by Getty Images

「結局、国歌は心から歌いたいと感じた時にだけ歌うものだとわかった。しかしこの歌はイタリア人の魂に火をつけるものだということは忘れないでほしい」

 変化が起きたのは、06年のドイツW杯だ。この時のアッズーリは、ジャンルイジ・ブッフォン、フランチェスコ・トッティ、アレッサンドロ・デル・ピエロ、ファビオ・カンナヴァーロ、クリスティアン・ヴィエリとそうそうたるメンバーがそろい、仲もとても良かった。

 そして大会初戦のガーナ戦、選手たちは大声で国歌を歌いだしたのである。大統領が言ったとおり、歌いたいという気持ちが生まれたのだ。唯一歌っていないのはマウロ・カモラネージだったが、03年までアルゼンチン国籍だった彼はイタリア国歌を歌えなかっただけだ。

 高らかに国歌を歌いつづけた結果、イタリアは見事ドイツW杯で優勝を果たした。そしてこの時からイタリアは全力で歌うようになったのだ。

 ただ今回のユーロでの国歌斉唱には、これまで以上の思いが込められているはずだ。

 昨年、イタリアも新型コロナウイルスで大きな被害を受けた。これまでに400万人が感染して13万人が亡くなり、人々は長く外出を制限され、街は無人となった。ロックダウンの間、誰が言い出すでもなく、毎日決まった時間に人々はバルコニーに出て、歌を歌い、互いに鼓舞し合った。その時の曲の一つがこのイタリア国歌だった。

 新型コロナウイルスの感染拡大はサッカーにも影響し、代表戦もほぼ1年近く行なわれなかった。そして久々に国際試合が再開された昨年の秋。残念ながら試合は無観客だったが、それでもアッズーリの選手たちは大声で国歌を歌い、それは無人のスタジムに大きく響いた。その時のことをベテランサイドバックのアレッサンドロ・フロレンツィはこう語っている。

「スタンドからの声援はいつも俺たちに多くの勇気をくれる。サポーターはまだ来れないが、我々を支えてくれているのはわかっている。だからイタリア中に届くように俺たちは誇りを持って歌ったんだ。またスタンドからの大合唱が聞ける日が来るのを祈りながら」

 そして最後にこう付け加えた。

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