「冨安健洋移籍」情報の舞台裏。現地記者が明かす一筋縄ではいかない交渉 (3ページ目)

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 さらに、アタランタはもうひとりDFを失う可能性がある。SBのロビン・ゴセンスだ。彼もまたジャンパオロ・ガスペリーニ監督のチームの中心選手だ。

 つまり、冨安の移籍話のまわりには、さまざまな選手やチームの事情が複雑に絡み合っているのだ。移籍市場が開いた早い段階では、ありとあらゆる噂が立つ。ただ、誰もができるだけ手の内を見せず、最後にカウンターアタックで他を出し抜きたいと思っている。

 したがって、冨安の移籍も今後どのようになるかわからない。ただし、一番可能性が高いのはやはりアタランタだろう。もしこの移籍話がうまくいけば冨安はジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督のもとでプレーするという恩恵にあずかれる。

◆欧州でプレーする日本人選手32人の今シーズンを5段階評価で総括。最高評価は誰だ?

 ガスペリーニは、若手をうまく使い育てることに非常に長けた監督だ。富安のマリーシアをより育て、CB、右SBとしての動きをみっちりと叩き込むことができるだろう。アタランタで冨安は、ホセ・ルイス・パロミノとラファエル・トロイ、もしくはベラト・ジムシティ、あるいは新たにイタリアにやって来るDFとともにプレーすることになるかもしれない。いずれにしても、ガスペリーニ監督のトレードマークの3バックの一角を担うことになる。

 どこでもプレーできるDFのオールマイティのカードの資質。それこそが冨安の価値をこれほどまでに高めた要因だ。そんな彼を手放すことはミハイロビッチにとっても、ボローニャサポーターにとっても決して歓迎すべきことではない。ボローニャで彼はとても愛されていた。

 だが、ミハイロビッチにしろ、サポーターにしろ、ボローニャが中レベルのチームであることは重々承知している。そしてトミーが、もっとビッグなチームで、CLのような大きな舞台でプレーするに値する選手であることを知っている。ミハイロビッチはことあるごとに、冨安はハイレベルの選手になるすべての資質を備えていると言っている。彼が大きく飛翔するチャンスを潰したくないと思っているだろう。

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