大迫勇也が埋められなかった「溝」。ドイツメディアが厳しい原因とは (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • 松尾/アフロスポーツ●写真 photo byMatsuo/ AFLOSPORTS

◆欧州でプレーする日本人選手32人の今シーズンを5段階評価で総括。最高評価は誰だ?

 むしろ問題はピッチ外にあった。

 2018年の加入当初はともかく、時間が経つとともに、地元メディアから大迫は、意思疎通のできない難しい存在として扱われるようになった。「ボディランゲージができない」「ファンに対して感情表現ができない」という書かれ方をしてきた。今年1月の移籍マーケットが開いている時期には、「大迫は東京五輪を目指しており、オーバーエイジ枠でほぼ選ばれるだろうから、日本のクラブへ移籍するだろう(つまりブレーメンでは不要)」などと書かれた。そのたびに、コーフェルト監督はじめクラブ幹部が「大迫はブレーメンに必要な選手だ」と弁明せざるを得なかった。

 大迫が地元メディアから「難しい存在」として扱われるのは、ある意味では仕方がないところもある。大迫はメディア対応を得意としない。あまり好んで喋ることもない。決して愛想のいい選手でも、多弁な選手でもない。日本人同士であれば、それはそれで個性のひとつだと理解することもできるが、それは海外ではなかなか伝わりづらい。

 2020-21シーズンはコロナ対策のため、通常の試合後のミックスゾーンでの取材対応はまったく行なわれなかった。その分、ブレーメンでは毎週のようにリモートで選手の記者会見を行ない、選手が順番に登場したが、シーズンを通して、大迫は一度もその会見に登場しなかった。

 それ以前から、ドイツ人記者が大迫のコメントが欲しいシーンで、大迫がノーコメントを貫くということがあった。意思疎通できる選手に対しては、意思疎通できない選手に比べて好感を持つのは、自然なことかもしれない。そのうちに大迫が厳しく書かれることが増えていった。

 大迫がドイツ語を話せないわけではない。かつては活躍した試合の後、自分からドイツ人記者たちの前に出て話をすることもあった。加入した当初はドイツ語でクラブの動画撮影に応じており、コミュニケーションはできるのだ。

 だが現在、地元メディアは「大迫は2部の予算では高給すぎる」と書く。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る