久保建英がビジャレアルに残っていたら...欧州を制した伏兵の戦いに思う (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Reuters/AFLO

 マンチェスター・ユナイテッド戦で、久保が一番長い時間プレーした左サイドには、ボランチ的に守備で相手を止め、配給役となれるマヌ・トリゲロスが起用されていた。久保がマジョルカ時代に定位置とした右サイドには、FW的な特性を持ち、守備で献身的に振る舞うジェレミ・ピノが先発。そして久保が最も力を発揮するトップの一角にはチームのエースであるジェラール・モレノが君臨し、先制ゴールを記録していた。

 こうして見ると、やはり久保が先発ポジションを奪うことは難しかっただろう。ただし、貴重なバックアッパーではあったはずだし、コンディション次第で先発の座を射止めていたかもしれない。

 例えばバッカも、久保と同様に国内リーグではポジションを奪えず、EL要員だった。しかし、辛抱強くしたたかに出場時間を勝ち取り、終盤のセビージャ戦ではハットトリックを達成して、EL決勝に先発。ラボーナでのクロスなど、南米選手らしい技術で存在を示した。

 また、アルゼンチン代表GKヘロニモ・ルジは、国内リーグはわずか2試合出場と、セルヒオ・アセンホの控えだった。しかし、ELでは正GKとして13試合に出場。決勝ではPK戦で、11人目に自らが蹴り込んだ後に劇的なストップに成功して勝利に貢献し、欧州制覇の殊勲者になった。

◆欧州でプレーする日本人選手32人の今シーズンを5段階評価で総括。最高評価は誰だ?

 久保は今年1月、ヘタフェに移籍する決断を下した。単純に出場機会を求めての行動だった。エメリの采配に失望し、自らのプレーに自信があったのだろう。その勝気さが光と影を作った。

 久保はヘタフェでも、デビュー当初は期待されたものの、結局はホセ・ボルダラス監督からエメリと同じ評価を下され、ベンチを温める機会が多くなった。今や多くのクラブや選手がシーズン途中での移籍を限定的にするのは、ネガティブ要素が強いからだ。久保は厳しい状況に晒され、しかもチームは本格的な残留争いをすることになった。

 一方、久保は残留決定がかかる試合で終盤に出場機会を得て、鮮やかにゴールを決めている。その度胸の良さとプレーの質に、彼の本質はあるのだろう。終わりよければすべてよし、ではないが、見事に帳尻を合わせた。スペインでは「正念場でどのように振る舞えるか」が求められるだけに、面目を保ったと言える。

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