乾貴士、武藤嘉紀所属のエイバルの降格要因は? 小さな町の夢にサヨナラ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 そしてコロナ禍は、もうひとつの不利をもたらした。5人まで選手交代が許されたことによって、戦力差があからさまに出てしまった。一丸となって最後まで戦い、ぎりぎりで勝ち点を得るパターンは崩れた。

 先手を取られると、戦意まで喪失することになった。

「バレンシア戦も、最初のボールロスト、最初のカウンターを決められている。それで選手たちは疑念を持ってプレーするようになった。前半の最後に1点を返したが......」

 メンディリバルは語っているが、最後は負け癖のようなものがついていた。

 バスク人指揮官は、ハードワークを土台にしたハイプレス、ハイラインの戦いを作り上げた。ボールを蹴り込みながら、球際で負けず、セカンドを拾い、押し込んではゴールを奪う。自陣に入られたらリトリートでしぶとく守る。そのプレーモデルの中で、選手を成長させていた。

 乾はまさにその筆頭格だった。2015年夏にブンデスリーガからやって来た当初は、守備の不安が指摘されていた。しかし、辛抱強く使われ続け、パスと侵入経路を分断するディフェンスやプレスのタイミングなどを覚えると、2年目からは攻撃での良さが出て、主力になっていった。メンディリバルは選手の力を引き出す名将と言えるだろう。

◆「お金はゼロでもいいくらい」。乾貴士がスペインでプレーできる喜びを語る

 今シーズン、実はエイバルは2人の主力を失ってスタートした。ひとりはチーム最多得点・最多アシストのチリ代表MFファビアン・オレジャーナ。もうひとりは次にゴール数が多かったブラジル人FWシャルレス。チーム全体が世代交代を求められる中、この穴は埋まらなかった。

 新エースとして迎えられたのが武藤だったが、わずか1得点ではFWとして及第点は与えられない。

 2部降格が決まったバレンシア戦は象徴的だった。武藤は先発したものの、チームメイトと連係が合わず、不調のまま前半35分で交代を命じられている。プレミア仕込みのフィジカルとスピードで、メンディリバルの期待を背負いながら、ケガもあってフィットしなかった。バレンシア戦の評価は各紙とも星0(0~3の4段階)と辛らつだ。

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