酒井宏樹にサヨナラは似合わない。マルセイユ市民が愛した5年間の功績 (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 ところが、いざフタを開けて見れば、開幕戦から右SBのポジションをキープしてリーグ戦35試合に出場(うち34試合がスタメン)。ライバルが移籍したこともあるが、初年度から完全なレギュラーとして活躍したのである。しかも、フィールドプレーヤーの出場時間としてはチームナンバーワンのリーグ戦3013分を記録し、唯一3000分の大台を超えた。

 開幕2戦目のギャンガン戦では、相手のウインガーのスピードに圧倒され、個人突破を許したことが原因で先制点を献上することもあった。しかしその経験を糧として、間合いを変化させるなど相手の研究を怠らなかったことが、初年度の成功につながったと言っていいだろう。

 いずれにしても、シーズン途中でクラブのオーナーと監督が替わるという激動のなか、前シーズンの13位からヨーロッパリーグ(EL)出場権を獲得する5位に躍進したことで、クラブ内外における酒井の評価と地位が確固たるものとなったことは大きかった。

 2年目は、酒井にとってさらに実り多きシーズンだった。ルディ・ガルシア監督の下、リーグ戦33試合に出場するなど引き続き主軸として活躍したほか、EL準々決勝ライプツィヒ戦の第2戦では終了間際に加入後初ゴールを決めて逆転勝利に貢献。チームメイトからもみくちゃにされながらピッチ上で自らの誕生日を祝ったことは、今も多くのサポーターの記憶に刻まれている。

 結局、ELでは決勝戦でアトレティコ・マドリードに敗れたものの、チームとしてはリーグ4位に浮上するなど、申し分のないシーズンとなった。とくに酒井は、パトリス・エヴラがトラブルを起こしてシーズン途中で退団したことをきっかけに、その穴を埋めるべく左SBを経験するなどプレーの幅を広げたことが、その後の成長にもつながった。

 チームとしてリーグ5位に一歩後退した3年目も、酒井はレギュラーとして欠かせない戦力としてフル稼働し、そのシーズンのファン選出年間MVPを受賞。4年目となる昨シーズンの開幕直後には、アンドレ・ビラス・ボアス新監督の下、2022年6月までマルセイユとの契約を更新した。

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