インテル優勝の舞台裏。練習用マシンがルカクのプレーを変えた (3ページ目)

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 コンテは誰にも遠慮はしない。言うべきことは誰に対してもはっきり言う。それが自分の高く評価する愛弟子であっても、だ。コンテからかなりきつい叱責を受けた後、ビダルはこう約束したと言う。

「確かにあんたの言うとおり、これまで自分が満足いくプレーができてないし、期待にも応えられていない。でも、俺は必ずゴールをすると約束する。それも生死を分けるような重要なゴールを、だ」

 結局、ビダルは今シーズン、1ゴールを挙げただけだったが、それは彼が宣言したとおり、今シーズンで最も重要な試合のひとつだった。1月17日、サンシーロでのユベントス戦で、インテルは勝利を収めた。9連覇中のユベントスを下したことは、選手に自分たちの強さを自覚させ、インテルの最終的な躍進の原動力となった。

 この試合は2-0で勝利したのだが、もうひとつのゴールを決めたのも、コンテのためなら火の中にでも飛び込みかねないニコロ・バレッラだった。

 バレッラは2019年まで故郷のカリアリでプレーしていたが、2018-19シーズンに最優秀MF賞を受賞し、インテルに移籍した。この時、他にも彼をほしがっていたチームがあった。ユベントスだ。ユベントスはインテルより高い年俸を約束した。だが、ユベントスのオファーに彼はこう答えたのだ。

「インテルも僕に興味を持っている。僕はインテルに行きたい。金額の多い少ないではない。僕はコンテ監督のもとでスクデットを勝ち取りたいんだ」

 サッカーチームでは重要なタイトルを獲得すると、選手たちにボーナスが支払われるのが一般的だ。だがインテルの経営状況は他のビッグクラブと同様、非常に厳しい。今回、インテルの選手たちはボーナスを辞退することにした。チームはそのことを非常に感謝している。選手とチームが良好な関係にあることの証であり、それは勝利には欠かせない要素だろう。

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