インテル優勝の舞台裏。練習用マシンがルカクのプレーを変えた

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 マシンは中盤のラインのところに設置され、時速40キロというハイスピードのループボールがゴール前のルカクに向って繰り出された。ボールを受けたルカクは、衝撃の強さに、はじめは息もできなかったという。しかし続けていくうちに、少しずつその強力な球を受けることに慣れてきた。

 右で受けて左にターン、もしくはその反対でボールをコントロールすることも習得。ボールを受ける衝撃に対してどのように筋肉を使うか、どのようにボールを止めるのか、どうやってボールを出す相手を瞬時に判断するかを、コンテはルカクの頭と体に叩き込み続けた。

「練習では、俺の背後にデ・フライと(アンドレア・)ラノッキアがいて、俺を遮ろうとしていた」と、ルカクは語る。

「だから俺は全力を尽くして彼らを振り切ってパスを出すか、ドリブルで抜き去る必要があった。彼らは強力なDFだ。彼らを突破することができたなら、試合で他のチームのDFにも勝てると思った。実際、練習を重ねるたびに、適切な反応をする余裕ができてきた。1秒、2秒と余裕が増せば、それは大きな違いになる」

 実際にその違いは目に見えるものになった。ルカクはシュートを多く決めるだけでなく、仲間にゴールさせるシーンが格段に増えてきた(昨季は2アシスト、今季はここまでに9アシスト)。コンテの目論見は大当たりだった。

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「インテルに来てすぐに、監督は俺に向かってばっさり言った。『もし全力で練習に向わなかったら、お前がいくら値段の高い選手だろうが、プレーはさせない』。直球でそう言ってくれるのは小気味よかったし、俺に必要な言葉でもあった。俄然やる気が出たよ。こっ恥ずかしい賞賛は、面と向かっては言わないが、本当に最高の監督だ。俺は死ぬまで全力で彼とともに戦うつもりだ」

 サッカーマシンそのものより、コンテの振る舞いがルカクを変えたのかもしれない。指揮官の持つ求心力は他のメンバーにも発揮された。

 アルトゥーロ・ビダルは今季、コンテに強く望まれインテルに入ったが、まだその期待に応えられていない。フィジカルコンディションも悪く(現在もケガで長期離脱中)、ピッチでのパフォーマンスも満足いくものではなかった。

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