レアルのCL完敗は必然だ。時代の変遷を感じさせる決勝プレミア対決

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 チャンピオンズリーグ(CL)準決勝、チェルシー対レアル・マドリード。マドリードで行なわれた第1戦を1-1で折り返したその第2戦。スコア的には、アウェーゴールを奪取しているチェルシーがやや有利と目されたが、レアル・マドリードが同点に追いつき、盛り返す形で終わった第1戦の展開を見ると、両者イーブンの関係にも見えた。

 前日に行なわれたマンチェスター・シティ対パリ・サンジェルマン(PSG)戦(2-0、合計スコア4-1)より、接戦が期待された。

 ところが結果は、チェルシーの2-0(合計スコア3-1)。試合はレアル・マドリードに裏切られる格好の内容となった。

 カリム・ベンゼマの決定的なヘディングシュートが、チェルシーGKエドゥアール・メンディの超人的セーブによって阻止される不運があったことは確かだ。しかし、レアル・マドリードGKティボー・クルトワも、それを上回るビッグセーブを再三にわたり連発。その2-0は、3-1あるいは3-0に限りなく近い内容と言えた。

 レアル・マドリードがCLの準決勝で、これほど差のある内容で完敗した試合を見た記憶はない。最大の低迷期を挙げるならば、銀河系軍団と言われた時代の中期から後期にかけて(2003-04シーズンから2009-10シーズンあたりまで)になるが、その頃に逆戻りした印象だ。

チェルシー戦後に完敗を認めたジネディーヌ・ジダン監督(レアル・マドリード)チェルシー戦後に完敗を認めたジネディーヌ・ジダン監督(レアル・マドリード) 見映えが悪いというか、パッとしないサッカーだ。

 具体的に言えば、典型的な守備的サッカーに陥っていた。ジネディーヌ・ジダン監督は、自軍を「弱者」だと分析したのだろう。恥も外聞もなく守備的な3バックで臨んだ。トーマス・トゥヘル監督率いるチェルシーも3バックを採用するチームだが、両軍が対峙すると、その違いは鮮明になるのだった。

 チェルシーは、3-4-2-1と言うより、3-4-3と言ったほうがしっくりする3バックだ。前線にメイソン・マウント、ティモ・ヴェルナー、カイ・ハバーツの3人が、ほぼ横隊するようにポジションを取る。マウントとハバーツはウイングと呼べるほど両サイドに張っているわけではないが、2シャドーと言うほど真ん中に閉じているわけでもない。3人でピッチの横幅を広く均等にカバーする状態にあった。

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