元神戸監督は、CL決勝進出のマンチェスター・シティに何を注入したのか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

 かつてのグアルディオラ監督は、圧倒的なポゼッション力で攻め続ける戦いを信条としてきた。「フィーリングに合わない」と言って、リトリートからのカウンター戦術の採用を封じていた。しかし、リージョが来てからの1年は、状況に応じて柔軟な選択をするようになった。

◆神戸リージョ監督が見た日本。「しょうがない」という言葉に思うこと

 PSGとのセカンドレグは象徴的だ。マウリシオ・ポチェッティーノ監督のPSGは、じっくりと守ってからの鋭いカウンターに特長がある。リアクション戦術で「後の先」を取れるというのか。しかしボールを預けられた時のプレーは、実はそこまでの怖さが出ない。

 そこで、マンチェスター・シティは受けて立ちながら誘い込む戦い方をした。ベテランのブラジル人ボランチ、フェルナンジーニョをアンカーに起用したのも、その表われのひとつだろう。序盤はパワーをもって攻めてくる相手に苦しんだが、それを凌ぎ切るだけの覇気も見せている。実際、ラインは引いても気持ちは引いていなかった。球際への激しさはPSGを上回っていた。

「ウルグアイ代表のセンターバックだったディエゴ・ルガーノは、シュートに対して絶対に顔をそむけなかった。顔面でも何でも、(失点を)止めるために体を張れた。その姿がチームに勇気を与えるんだ」

 リージョはかつてそう話していたことがあったが、PSG戦のマンチェスター・シティ陣営はそんな闘気に満ちていた。ポルトガル代表のセンターバック、ルベン・ディアスはクロスやシュートに対し、何度となく体を張った。それを仲間が次々に激励していた。

 そして前半11分だった。ラインを高く、前がかかりになったパリの裏を狙い、シティはGKエデルソンが左サイドに長いボールを放り込む。それを受けた左サイドバック、アレクサンドル・ジンチェンコが深い位置からマイナスに折り返し、ケヴィン・デ・ブライネがシュートを打つと、そのこぼれ球をリヤド・マフレズがネットを揺らした。

 カウンター一閃だ。

 続いて後半18分、自陣で与えたFKの後だった。奪い返したボールをジンチェンコがダイレクトでデ・ブライネの足元に入れ、再びカウンターを発動。左サイドを崩し、フィル・フォーデンの折り返しを、またもマフレズが蹴り込んだ。

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