「勝てるGK」ケイロル・ナバス、驚きのタイトル数。乗り越えた試練も多数 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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<交換移籍不成立から大活躍>

 2014-15シーズンから5シーズン所属したレアル・マドリードでは、12のタイトルを獲得している。

 2015-16シーズンではCLで8試合連続のクリーンシートを達成。738分間無失点はイェンス・レーマン(アーセナル)に次ぐ記録だった。しかし、CL3連覇のレアルのゴールを守ったナバスでも順風満帆だったわけではない。

 レアルに加入した当初は、イケル・カシージャスの控えという立場だった。フィールドプレーヤーと違ってGKにはポジションが1つしかない。クラブのレジェンドであるカシージャスの存在は、ナバスにとって大きな壁だったに違いない。

 そして、カシージャスは次のシーズンにFCポルトへ移籍したが、ナバスにとって真の危機はむしろその時に起きている。

 レアルがマンチェスター・ユナイテッドのデ・ヘアの獲得に動いたからだ。世界最高クラスのデ・ヘアはスペイン人でもあり、外国人枠を1つ空けられるのもクラブにとってメリットだった。ナバスは入れ替わりでマンチェスター・ユナイテッドへ移籍することになっていた。

 ところが、ナバスとデ・ヘアの交換トレードは意外な理由で破談になっている。ぎりぎりの交渉の末、マンチェスター・ユナイテッドから契約書がファクスで送付されたのだが、LFP(スペインプロリーグ機構)に到着したのが移籍期限の8月31日を越えてしまったのだ。マンチェスター・ユナイテッドは送信履歴が23時59分だと主張したが受け入れられず、デ・ヘアのレアル移籍は不成立となってしまった。

 プレミアリーグの移籍期限にはまだ余裕があったので、ナバスをマンチェスター・ユナイテッドに移籍させることは可能だったが、デ・ヘアを獲れなかったレアルがナバスを手放すはずがない。マンチェスター・ユナイテッドもデ・ヘアがいるのにナバスを獲得する理由はなく、この話はこれっきりになった。

 カシージャスの移籍で背番号1と正GKの座をつかんだナバスは、このシーズンからのCL3連覇に貢献。2016-17シーズンは5年ぶりのリーグ優勝も成し遂げたわけである。

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