2021.04.25

キミッヒはドイツサッカーの新リーダー。自ら契約交渉、将来は名監督

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

◆バイエルンのミュラーは不思議な名選手。200ゴールを可能にした武器とは>>

 リバウンド・メンタリティは「主張力」と「傾聴力」で成り立つとされている。自己主張の強さだけでなく、周囲の助言を聞く能力が必要で、自分を客観視できる能力と言ってもいいだろう。キミッヒは少年時代からコーチと議論するほど主張があり、議論するということは相手の意見を聞くこともできたわけだ。つまりリバウンド・メンタリティに優れていて、障害や挫折に強いメンタルの持ち主だったと言える。

<将来は名監督>

 シュツットガルトから2013年にライプツィヒへ移籍した時には負傷で数カ月プレーできず、デビュー戦を待ちつづけなければならなかった。負傷や不調でコンディションが低下した時、ゼロから一気に100にしようとすると失敗する。意欲の空回りだ。ベストな状態にならないことにいらだち、無理をしてかえって復調が遅れる。

 賢い選手、リバウンド・メンタリティの強い選手は1つ1つ積み重ねていく。積み重ねていけばいつか元に戻るとわかっているからだが、自分を客観視できないとなかなかできない。キミッヒは3カ月間プレーを禁止されたが、確実に復帰している。

 15年に移籍したバイエルンでは、ジョゼップ・グアルディオラ監督(スペイン)の下、SB、CB、MFと複数のポジションをこなした。180㎝に満たない身長でのCB起用は無謀にも思えたが、キミッヒはペップがなぜそこに自分を起用するのか理解していたようだ。ボールを失わず動かせる能力、広いエリアをカバーできるスピード、守備の指揮能力を発揮して期待に応えた。

 現在、バイエルンでは中央のMFとしてプレーしている。プレー関与の多いこのポジションは居心地がよさそうだ。SBから始めてアンカー、CBもこなすマルチぶりはフィリップ・ラーム(ドイツ)の後継者だが、強烈なリーダーシップはローター・マテウス(ドイツ)を思わせる。

 キミッヒは契約交渉を仲介人に任せず、自分でやるようになった。選手自身が交渉にあたるケースは少しずつ増えているようだが、自己主張ができるキミッヒらしい。ユース時代からリーダーだった点では、ディディエ・デシャン(フランス)とも似ている。キミッヒが将来、名監督になっても驚きではない。というより、そうなるとしか思えない。

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