久保建英に課されている難題。バルサでないチームでメッシの働きを (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFP/AFLO

 率直に言って、ヘタフェで可能性を感じさせるボールプレーヤーは久保だけだった。一瞬でチャンスを作り出せる力を顕示。それは味方選手がついていけないほどのレベルだった。

 しかし、スペインで評価されるのは、勝利につながるプレーである。久保は「弱い」と断じられるほど、弱くはなかった。だが、相手DFとの1対1の勝負で、勝ち切れるのが「強い」であるなら、チームのエースとしては物足りないのだろう。

◆久保建英がスペインに渡る20年前。アトレティコと契約した日本人少年がいた>>

 この日、バルサのエースであるリオネル・メッシはけた違いだった。スルーパスを呼び込むと、それを力強くゴール。また、裏に入ったボールに反応し、右足でボレーを狙い、ポストに跳ね返ってきたところを左足で流し込んでいる。ほとんどひとりで試合の流れを決めてしまったのだ。

 もちろん、久保にメッシのようなプレーを求めるのは酷だろう。
 
 ヘタフェはボールを持つことを放棄し、相手の攻撃を受け止めながら、ひたすらカウンターを狙う戦い方だった。それぞれの選手が持ち場で奮闘し、相手を嫌がらせ、どうにか局面から好転させる。そういう仕事に向いたファイタータイプが集められたチームで、技術レベルは低い。ボールはつながらず、攻め手が乏しいのが実情だ。

 バルセロナ戦は5-4-1という守備ブロックを作った布陣で、久保は左MFとしてプレーしている。与えられた優先的役割は、左に陣取って相手の攻撃にふたをすることだった。右ウィングハーフのセルジ・ロベルト、右センターバックのミンゲサ、そしてメッシやフレンキー・デ・ヨングとの連係を断ち切れるか。後手に回るのは覚悟のうえでカウンターに入るわけだが、ゴールが遠すぎた。

 バルサの選手たちが、面白いように間を取ってボールを受け、スペースを作りながら前進する姿を、久保はどのように見つめていたか――。それは、彼自身が最も生きるプレースタイルだろう。ボールプレーヤーに囲まれた状況で同じ絵を描けるなら、より力を発揮できるはずだ。

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