久保建英の市場価値は下がったのか。レアル戦ベンチの屈辱を胸にやるべきことは?

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 事実、久保はヘタフェでも同じ問題を抱えることになった。エルチェ、ウエスカ、カディスといった戦力的に劣る相手には先発を任され、存在感も示したが、格上相手には「守備の不安」という判断で先発を外れるか、実際に出場しても低調な試合になっている。ボルダラス・ヘタフェは長いボールを蹴り込むサッカースタイルで、フィジカル的強さを要求されるだけに、久保にとって然るべきポジションがないのだ。

「タケ(久保)は試合最初こそ苦しんでいたが、その後はとてもいいプレーをしていた」

 レアル・マドリード戦の前節、カディス戦後、ボルダラスは一定の評価をしながらも、後半5分でベンチに下げた理由について、久保への物足りなさを滲ませていた。

「(久保交代の理由は)前線での動きが足りず、戦術的な交代だった。FWのハイメ(・マタ)はいい仕事をしていたが孤立し、パートナーが必要だった。スコアを見ると交代が当たらなかったように見えるが(久保交代後にオウンゴールを献上して黒星に)、悪くはなかったと思う」

 だからレアル・マドリード戦でのベンチも、何ら不思議なことではない。久保は十中八九、ヘタフェを退団することになるだろう。昨シーズンと比べて市場価値は下がり、レアル・マドリードへの道としては一歩後退と言える。

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 ただ、実力が落ちたわけではない。ボールを持った時の技術は出色で、攻め崩す役としては今も引く手はあまただと言える。新しい挑戦の場では、1年間は腰を据え、成熟することが求められるだろう。最後の10代となる来シーズン、じっくりとサッカーに向き合えるか。一心不乱に駆け上がってきた久保だが、ここでは"粘り"も求められているのかもしれない。

 残りのシーズン、久保はまず、全力を尽くすしかないだろう。チームは15位で、降格圏18位のバジャドリードとの勝ち点差はわずか4。2年連続で所属クラブを降格させることになったら、スペインでは思った以上に不名誉なこととなる。

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