2021.04.09

バルサのデンベレが本領を発揮。天才独特の「ぬた〜ん」とした切り返し

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 コースが空けば強烈なシュートを打てる。相手がコースを消しにきたらヒュッと足を振って切り返す。ペナルティーエリア内でこれをやられたら、DFはシュートブロックに体を投げ出すしかないので、至極簡単に引っかかってしまう。

 切り返しの名手は昔からいるが、デンベレのようなタイプはあまり記憶にない。ジョージ・ベスト(北アイルランド)、ヨハン・クライフ(オランダ)、クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)などの切り返しはキレが抜群だった。

 切り返しと言えばキレ勝負のようなものだが、デンベレの場合は「きゅっ」という感じのキレはあまりない。「ぬた〜ん」とでもいう感じの緩さである。この脱力感がデンベレ独特なのだ。

 緩くはあっても遅くはない。力が入っていない分スムーズで、たぶんそのほうが速いだろう。プレー全般に脱力している選手だが、切り返しにはそれが顕著に表われている。日常生活では困りもののルーズさも、切り返しに関してはルーズなのが効いている。

 子どものころから、こんな感じなのだと思う。体のバランスが左右均等でブレがない。小さいころから両足を普通に使ってきたおかげだろう。最初に覚えた切り返しのまま、すべてのカテゴリーを通過してきたに違いない。

 それが天才というものでもある。スタートが、もうゴールなのだ。

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