『鬼滅の刃』の剣士と酷似。サッカーの育成の主流はパーソナルトレーニングへ

 思い起こせば、僕が以前ビルバオに取材に行った時も、トップチームの監督が育成年代の子どもたちに「今日はセンターバックを集めてクリアの練習をします」と言って、各年代のセンターバックの子だけを集めて集中的にトレーニングをしている、という話を聞きました。もう10年以上前の話ですけど、その頃から育成年代のパーソナルトレーニングが始まっていたんですよね。これは、『鬼滅の刃』で言う育手によるマンツーマンの鍛錬に近いと思います。

中山 確かに。1対1のパーソナルトレーニングは、フランスの育成現場でも基本になっていますね。僕がクレールフォンテーヌに取材に行った時も、1年目の12歳時はリフティングからパス、トラップ、ドリブル、キックなど、個人テクニックの部分を集中的かつ楽しみながら指導すると聞きました。そのうえで、2年目から3対3など小グループで戦術の基礎を学ばせる、と。テクニックより先に戦術を教えることは絶対にしないそうです。炭治郎も、狭霧山で鱗滝さんのパーソナルトレーニングで基本スキルを身につけたあとに、実戦のなかで戦術を身につけていったことと、似ているところがありますね。

倉敷 例えば育手からの鍛錬を介さずに自力で選別を突破した嘴平伊之助のように、ストリートからサッカー選手が生まれるという考え方は、南米のブラジルでも、欧州のチェコでも、かつては至るところで文化として存在していましたが、現在はどこも絶滅しそうな雰囲気で残念ですね。伊之助の例でいうと、サッカーもボールホルダーには複数の相手が襲い掛かってくる競技なわけですから、彼のように全身を研ぎ澄ませている必要があります。鱗滝さんが極端に空気の薄い狭霧山で罠を仕掛ける厳しい鍛錬を炭治郎に課したのは、わずかな匂いでも嗅ぎ分ける野生の勘を磨く目的があったのでしょう。サッカー界にも野生の勘を働かせる選手がたくさん現われてほしいです。

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