「リーガ史上、最も善人」のファンタジスタが語る、ペップから学んだ指導とは?

  • 小宮良之●文 photo by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

「ペップ(グアルディオラ)は情熱的な話しぶりだったよ。自身がバルサBの監督を始めた頃の話を引き合いに出してくれた」

 バレロンは、チームとしてファンタジーを創り出すことに成功した数少ない監督、グアルディオラに師事した。

「ペップは選手時代の感覚を大事にしたらしい。"このトレーニングをしたら居心地が良かった"というフィーリングだね。ボールを大事にしてできるだけ後ろからつなげる、そのためにはポジション的優位を保つようなスペースの使い方を徹底的にする、という順序で。

 ただ、そのトライが最初はうまくいかなかったらしい。ペップは、"もっと実践的、現実的な路線で行くべきでは"と方向転換を図ったらしいよ。"このままでは試合に勝てない"って。結果が出なかったら、監督は終わりだ。でも、負けないためのトレーニングをしたとき、確信したらしい。『このやり方は嫌だ』って。フィーリングが違ったそうだ。

 そしてペップは開き直ったらしい。"もし、このやり方で勝てないとしても、自分が監督として責任をとるだけだ"と。それからフィーリングのままの指導に戻したら、少しずつうまくいくようになったという。『それだけの能力がある選手たちのおかげ』と強調していたけどね」

 現代サッカーはグループを管理し、作業能率を上げることに汲々(きゅうきゅう)としている。本能的、直感的に生み出されるファンタジーなサッカーは可能か――。マンチェスター・シティのグラウンドで、バレロンは明るい兆しを見た。洗練されたボールプレーの枠組みのなか、お互いが切磋琢磨し、若い選手も成長を見せていた。ボールの動きにはファンタジーがあった。

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 今シーズン、バレロンはデポルティーボのBチームであるファブリルを率いて監督1年目になる。トップチームの監督を固辞し、Bチームから監督を始めた点は、グアルディオラと重なる。すでに2人の選手をトップチームに送り込んでいる。

 そしてバレロンには、指導者として期待できる人間性がある。

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