『鬼滅の刃』の産屋敷耀哉は、サッカークラブの理想のオーナー像である (4ページ目)

◆メッシは竈門炭治郎?「鬼滅の刃」ファンのサッカー識者3人が熱く語る>>

中山 それにしても、最近はクラブの会長を地元の名士が務めるケースが激減してしまいましたね。サッカーが本格的にビジネス化する以前の90年代後半までは、たとえばイタリアのクラブのほとんどは、ファンお馴染みの会長が君臨していました。ミランのシルビオ・ベルルスコーニ会長、インテルのマッシモ・モラッティ会長、ローマのフランコ・センシ会長、フィオレンティーナのヴィットーリオ・チェッキ・ゴーリ会長、サンプドリアのエンリコ・マントバーニ会長、ラツィオのセルジョ・クラニョッティ会長、ペルージャのルチアーノ・ガウッチ会長......。

 彼らはみな、多くの日本のカルチョファンが知る名物会長たちでした。「金を出す代わりにチームにも口を出す」という彼らのエピソードは数知れず、選手が自分のクラブのことを語る時、必ず会長の名前が出てくるほど大きな存在でしたし、産屋敷耀哉のように語るに足る人物でした。残念ながら、こういったイタリアのファミリーは時代の変化とともに滅亡し、結局、カルチョ界で生き残っているのはアニェッリ・ファミリーだけになってしまいました。もちろん、この傾向はイタリアだけの話ではなく、ヨーロッパ全体に共通している点ですが。

倉敷 興味本位な質問をひとつ。現在のパリ・サンジェルマンのナセル・アル・ケライフィ会長は財力的には申し分なさそうですが、カリスマ性や人身掌握術を持った人物なのでしょうか?

中山 いや、トーマス・トゥヘル監督を解任した人事を見ると、産屋敷耀哉というよりも、鬼舞辻󠄀無惨の匂いがしましたね。クラブをようやくチャンピオンズリーグ決勝戦に導いてくれた功績者に対しても、シーズン前半戦の内容が悪いと見るや、お前ではバルセロナに勝てないと容赦なく首を切ってしまう。トゥヘル本人はまだまだやる気満々だったのにもかかわらず、です。あの無慈悲なやり方は、下弦の鬼4人を自らの手で葬ってしまった鬼舞辻󠄀無惨を彷彿とさせます。

(第4回へつづく)

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