ジダンはファンタジーを捨てた。欧州3連覇と名将になれた理由 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 ユベントスでは2度のセリエA優勝、インターコンチネンタルカップ(現行のクラブワールドカップ)優勝。レアル・マドリードではリーガ・エスパニョーラ優勝、CL優勝。そしてフランス代表ではワールドカップ、EURO優勝と、ファンタジスタとして栄光に浴した。勝利のロジックを自然と体に叩き込まれ、彼なりに見出した答えがあったのだろう。ファンタジーは、その数式において絶対ではなかった。

 ジダンは自らの華麗なプレーの陰で、勤勉に働く選手の存在を強く感じていた。トップ下で自由なポジションが約束された時、その背後には常にサポートがあった。ディディエ・デシャン、エドガー・ダービッツ、エマニュエル・プティ、パトリック・ヴィエラ、そしてクロード・マケレレなど、相手の攻撃に立ちふさがり、強力なフィジカルを武器にボールを奪い取り、走り回れる"労働者"がいた。

 真面目なジダンは、チームが勝利する理由を「彼ら」に探し当てたのだろう。だからこそ、自分の"影たち"によく似たカゼミーロのようなMFを重用する。送り出す選手の「献身」を極限まで引き出し、一発に活路を見出せる勝利パターンを築き上げた。

「もし苦しまなければならないなら、苦しむ。サッカーはそういうスポーツだ」

 ジダンはしばしばそう言う。勝負に対し、腹を括っている。その姿勢はファンタジーという脆さを削ぎ落し、彼を名将にしたのだ。
(つづく)

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