2021.03.12

マラドーナがまさに典型。ファンタジスタになぜ監督成功例が少ないのか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Fujita Masato

 監督にとって必要な資質とは、チームを束ね、士気を高め、決断するというリーダーシップと同時に、数学的な「答えを導き出す」という思考を重ねられることにもあるかもしれない。

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 元選手でいうと、「名将」と呼ばれる監督の出身ポジションは、ボランチが多い。

 かつてバルサの司令塔だったジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)は筆頭だろう。ビセンテ・デル・ボスケ(元レアル・マドリード、元スペイン代表)、カルロ・アンチェロッティ(エバートン)、ディエゴ・シメオネ(アトレティコ・マドリード)、アントニオ・コンテ(インテル)、ディディエ・デシャン(フランス代表)、ハンス・フリック(バイエルン)など、枚挙にいとまがない。

「中盤の選手は、チーム全体を動かす仕事をする。当然、ビジョンを持っていないといけない。それが監督になったとき、反映される部分はあるだろう」

 そう語っていたのは、現役時代に中盤でチームを手足のように動かしたシャビ・アロンソだった。今シーズンは、レアル・ソシエダのセカンドチームを率いて2年目。彼も有力な将来の名将候補と言える。

「監督は、ピッチで起こることを見渡せないといけない。予測も必要になるだろう。中盤の選手は、絶え間ないプレーの出し入れの詳細で局面が大きく変わることを肌で知っている。攻守のつなぎ目を知って、プレーを連結させる。その仕事の積み重ねは、監督としても役立つんだ」

 彼らはエゴを殺し、周りを生かし、チームを動かす。その反復によって、社会性を身につけているのだ。

 ボランチの次に多く名将を輩出しているのは、マウリシオ・ポチェッティーノ(パリ・サンジェルマン)などディフェンスの選手たちか。マルセロ・ビエルサ(リーズ)も現役時代は無骨なディフェンダーだったが、25歳で引退する前から狂気的な研究心で理論を組み立て、今はその実践を執拗に繰り返している。

 特殊なポジションであるGKだが、フレン・ロペテギ(セビージャ)、ヌーノ・エスピリート・サント(ウルバーハンプトン)などは名将の域だし、GKコーチへの転身は当然、頻繁にある。