ロナウドに戦犯の烙印。「強烈な野心」を持つ男が失ったものは何か (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Reuters/AFLO

 今シーズン、ロナウドはセリエAで得点ランクトップの20ゴールを記録している(3月10日現在)。年齢を考えると、奇跡に近い。

 2月22日のクロトーネ戦では、左サイドからのクロスをファーに呼び込み、相手の背中を取ってヘディングを叩き込んでいる。流れながら上半身の筋力を使い、逆サイドにコントロール。ヘディングの強さとうまさを見せつけた。さらに、ミドルレンジから思い切り右足で狙うと、GKがこぼしたボールを味方が折り返し、全速力でゴール前に入ったロナウドが自らヘディングで突き刺した。

 3月2日、スペツィア戦では終盤にスルーパスを受けると、利き足ではない左足に呼び込み、素早い振りで逆サイドに流し込んだ。GKは鋭い弾道に手も足も出ない。スピード、タイミング、強度、度胸、どれもトップクラスだった。

 そんなワンシーンを切り取るだけでも、ロナウドがゴールゲッターとして健在なのが明白だろう。しかし、失われたものもある。

 ドルトムントのアーリング・ハーランドやパリ・サンジェルマンのキリアン・エムバペは、「それ」を手にしつつある。それは躍動感とも、時代をリードする勢いとも言えるかもしれない。ユーベでいえばフェデリコ・キエーザに漂う"予感"だ。

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 たった1試合で論じるのは不公平だろう。しかし、ロナウドはこれまで、こうした一戦必勝のゲームで、必ず結果を叩き出してきた男なのだ。

 欧州覇権奪回のために、ロナウドはユーベに三顧の礼で迎えられたが、3シーズン、結果が出ていない。マッシミリアーノ・アッレグリ、マウリツィオ・サッリ、アンドレア・ピルロと監督だけが交代し、今シーズンはスクデット10連覇にも黄信号が灯っている状況だ。

「ロナウドとの契約は1年残っている。まだ話し合う余裕がある。直近の問題ではない」

 ユベントスのスポーツディレクター、ファビオ・パラティチは明言をせず、契約更新は微妙なところだ。

 時は過ぎた。肉体は永遠ではない。しかし、ロナウドは無様に終わることだけはないだろう。

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