100年前、リバプールに5万人の観客を集めた女子サッカーの数奇な歴史 (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 それでもサッカーは楽しいから、70年代から女性の間に広がっていった。とりわけ、サッカーを「男のスポーツ」とみなさない国では女性のサッカー人気が高まった。アメリカンフットボールが「男のスポーツ」とされているアメリカでは、郊外に住むポニーテールの白人の女の子たちがサッカーを始めた。

 2006年のFIFA(国際サッカー連盟)の推定によれば、世界には約2600万人の女子選手がいた。その80年前にはほとんどゼロだったのだから、大変な増加ぶりだ。「サッカーの未来は女性だ」と、FIFAのゼップ・ブラッター前会長は宣言したものだ。

 最近では、サッカーは女性がやるものではないなどと考える人は、ほんのひと握りになった。イギリスでは昨冬、スカイTVの解説者数人が、マイクが入っていることを知らずに「どうせ女にはサッカーはわからない」と口にして、番組を降ろされた。彼らに同情するのは、女性のサッカー観戦を禁止しているイランの指導者たちくらいだろう。
(つづく)

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