冨安健洋の移籍先はプレミアの可能性大。出場記録ストップもいい機会だ

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 ところが、冨安は、その常識をあっさりと覆した。彼はラフなプレーをすることなく、チームを守ることができる。これは世界に向けての大きな紹介状である。今シーズンはこれまでの23試合でイエローはたったの4枚、レッドは1枚もない。

 長所をもっと挙げていこう。冨安は多才なディフェンダーだ。必要となればどこのポジションでもプレーできる。昨シーズンは主に右SBとして活躍したが、今シーズン、監督のミハイロビッチは彼の188センチという長身を生かさない手はないと考え、より厳しい戦場であるCBに移した。今シーズンはこのポジションで23試合中14試合をプレーしている。残りの9試合は右SBが7回、左SBが2回だ。そして右でプレーした時にはより攻撃にも参加し、その2試合はいずれもゴールを決めている。

 こんなプレーをしていれば、他チームの注意を惹かないわけはない。冬のメルカートでは、ミランが積極的に動いた。彼らが示した金額は1500万ユーロ(約19億5000万円)。その他もろもろのボーナスもいれれば、ボローニャは少なくとも2000万ユーロ(約26億円)近くを手に入れることができる計算だった。ほんの十数カ月前、彼らがトミーをベルギーのシント・トロイデンから獲得した時に払った額はたったの600万ユーロ(約7億8000万円)だったのだから、これはボローニャにとってはかなりの儲け話だったはずだ。

 しかし、ボローニャはこのオファーをかたくなに拒んだ。その理由を、冨安獲得の張本人であるスポーツディレクターのリッカルド・ビゴンはこう述べている。

「冨安はまだ伸びしろのある選手で、我々は手放す気はない。オファーは多くのチームから寄せられており、彼がイタリアを始めとした世界のトップチームでプレーする力があることは我々もわかっている。しかし、現段階ではボローニャのようなチームで経験を積み、成長をすることが、彼のためにも、イタリアサッカーのためにも最適であると私は信じている」

 もちろん、彼はもうひとつの重要な「売らない」理由については口にしない。ボローニャは、冨安の市場価値がもっともっと上がることを確信しているのだ。より大きなオファー(例えば2500万ユーロ+ボーナス)があれば、ボローニャのこの決意も揺らぐはずである。

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