久保建英はヘタフェに居場所をつくれるか。武闘派指揮官も正念場

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 ボルダラス・ヘタフェは、その戦闘力の高さを武器に2部から昇格し、躍進してきた。屈強な守備、荒っぽい攻撃。それで2018-19シーズンは5位に入っている。戦力を考えたら、快挙だ。

 しかし今シーズンは、何もかもが裏目に出ている。度を超えた積年のハードワークで、選手が摩耗したのか。守備が甘くなり、ラインを突破され、攻撃どころではなくなった。

 手詰まりのボルダラスが白羽の矢を立てたのが、久保だったのだ。

 いきなりの抜擢となったエルチェ戦、ウエスカ戦と、久保はその技術の高さでチームを牽引した。ただ、どちらも昇格組で力が落ちる相手だった。その後は、アスレティック・ビルバオ、アラベス、セビージャ戦と先発するが、効果的にプレーに絡めていない。ついにレアル・マドリード戦では先発を外され、レアル・ソシエダ戦も同様だった。

その立場は、わずか1カ月でエース候補からスーパーサブへ格下げだ。

――システムを変えましたが、新たに獲得した選手(久保やカルレス・アレニャ)を信じられなくなったのですか?

 レアル・ソシエダ戦後、記者が詰め寄ると、ボルダラスは淡々と答えていた。

「(今日の)システムはマドリード戦と同じだし、ここ数年ずっと使ってきたものだ。変えたというより、オリジナルに戻しただけだ。2人の選手は我々をサポートするためにやって来て、すぐに先発でプレーした。しかしチームの失点は増え、堅固さを失ってしまった。守備水準を戻すための編成だ」

 指揮官は、久保やアレニャのようなテクニカルな選手を入れた戦いに見切りをつけたのか――。

 久保は正念場だろう。ビジャレアルでも、ウナイ・エメリから非力さを疎まれた。シーズン途中に移籍したが、ボルダラスはエメリ以上にフィジカル中心の戦いを好む指揮官で、またもベンチで過ごす時間が増えつつある。

 先述したように、ヘタフェの選手は、技術的な高さよりもフィジカルや戦術面で秀でたタイプばかり。いざ「攻撃的に」と号令をかけても、思ったようにボールがつながらない。

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