メッシ中心のサッカーの限界。バルサはPSG戦大敗を機に再出発できるか

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

 バルセロナ対パリ・サンジェルマン(PSG)で想起するのは、2016-17シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝だ。第1戦のアウェー戦を0-4で落としたバルサが、ホームでの第2戦で6-1と逆転。合計スコア6-5で勝利した対戦である。

 第1戦を1-4で折り返した今回は、4シーズン前の戦いより、数字的には逆転の可能性が高く残されている。アウェーの第2戦(3月11日)で、バルサが1-4とすれば同点。0-3、2-5ならば逆転することができる。だが、その姿をいまどれほど想像できるだろうか。PSGに早くから赤紙退場者が出るとか、特段の事件が発生しない限り、逆転劇は成立しないだろう。

 PSGが強かったから。バルサが弱かったから。それぞれの要因が重なった結果だろうが、最もわかりやすいそれぞれの勝因と敗因は、この試合でハットトリックの活躍を演じたPSGの看板選手、キリアン・エムバペと、不発に終わったリオネル・メッシの関係に表われている。

PKで先制ゴールを挙げたものの、精彩を欠いたパリ・サンジェルマン戦のリオネル・メッシPKで先制ゴールを挙げたものの、精彩を欠いたパリ・サンジェルマン戦のリオネル・メッシ エムバペのハットトリックは、PSGがいいサッカーをした産物であることは確かだが、その個人技が絶大な武器になっていたことも事実だ。中でもバルサにPKで先制され、嫌なムードが立ちこめた中で奪った前半32分の同点ゴールは、エムバペの個人能力なしに語ることができない。

 一方、メッシがそれに匹敵するプレーを見せた瞬間はなかった。相手の守備陣に直接、恐怖感を与えることができていたのは、メッシではなくエムバペ。明らかな事実だった。

 バルサはメッシのワンマンチームだったわけではないが、3度のCL優勝を含む、ここ10年数年の成績は、メッシの存在なしに語ることはできない。これは2015-16シーズンからCL3連覇を達成したライバルチーム、レアル・マドリードの、クリスティアーノ・ロナウドとの関係にもあてはまる。両チームの栄光は、バロンドールを合わせて計11回獲得した2人のスーパースターの活躍と、密接な関係があった。

 レアル・マドリードとロナウドは、2017-18シーズンに3連覇を達成すると関係を解消。ロナウドはチームを去り、ユベントスに移籍した。その瞬間から、レアル・マドリードのCLにおける成績も下降に転じた。

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