すべてを失ったW杯のヒーローたちのその後。ブレーメ、ガスコインは今

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 2005年に引退した後は、ポルトガルとイングランドのチームで監督になろうとしたが、どちらも飲酒が原因で長続きしなかった。サッカーを失ったガスコインは、どんどん悪い方向へ進んでいく。酒やドラッグが日課となり、妻にも暴力をふるって離婚(彼女は後に暴露本を書いている)。ギャンブルにものめり込み、選手時代に蓄えた20億円近いとされる資産を失ってしまった。それではいけないと、酒から抜け出そうと試みるが、結局は失敗するという繰り返しだった。

 2008年にはホテルで自殺未遂。レッドブルを一度に50缶飲み、ホテルで暴れ病院に搬送される。2009年リハビリ施設に入所。2010年飲酒運転、免許不携帯で逮捕。出所祝いのパーティーで暴れる。2013年には飲酒の末、駅で乱闘。2014年、深酒して緊急搬送。2015年、元の彼女にハラスメントで通報される。2016年、ロンドンのホテルで喧嘩の後、階段から落ちて頭蓋骨骨折。2018年、電車の中で酔って女性にキスをしたとして訴えられた......。

 手にジンのボトルを持ち、裸足でタクシーから降りるガスコインの姿がたびたび目撃され、多くの人を驚かせるとともに、かつてのスターの変わりようを嘆かせた。

 しかし、最近の「ミラー」紙のインタビューで、ガッザは「ついにアルコール地獄から抜け出すことができたかもしれない」と語っている。2018年に2万ポンド(約300万円)をかけてオーストラリアの病院で胃にある種の薬剤のペレットを縫い付けたという。

「この薬をお腹に入れたままアルコール大量に飲むと気分が悪くなるんだ。つまりビールやワインをたしなむくらいには飲めるが、バカ飲みはできなくなる」

 現在はボーンマスの自宅にひとりで暮らしている。自分の伝記映画を作ることを計画中で、ガスコイン役を演じてくれる俳優を探している。その俳優には自ら手とり足取り演技を指導するつもりだそうだ。
(つづく)

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