久保建英が体感したレアルとの距離感。1軍半の王者は慌てなかった (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

「久保、アレニャの効果は消えた」

 2人を救世主のように評価していた『アス』は、瞬く間に手厳しい評価に転じている。直近のセビージャ戦で久保につけられた星はゼロ(0~3の4段階評価)。レアル・マドリード戦で久保が先発を外れたのは自明の理だった。

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 0-0の膠着状態でピッチに出てきた久保は、即座に才能の片鱗を見せている。右サイドでボールを運び、人を集めてから、アレニャへパス。それがゴール前のククレジャにつながっている。久保の投入で、明らかにヘタフェペースになった。得点の機運は高まっていた。

 ところが、レアル・マドリードの選手たちは少しも慌てず、取り乱さなかった。王者としての泰然さか。各自が落ち着いてポジションを取って、ボールを回す。すると59分、前がかったヘタフェを裏返すように、右サイドでフリーになったヴィニシウス・ジュニオールがFKを蹴るようなクロスを放り込み、これをカリム・ベンゼマが相手の前を取ってヘディングで押し込んだ。

 ヘタフェ陣営はリードを許したことによって、途端にナーバスになってしまった。

 試合巧者のレアル・マドリードは、それを見透かしたような戦い方を見せた。マルセロは、まさに円熟の域だった。65分、左サイドで幅を取って、プレーを作り出す。そして再び、左サイド奥深くでボールを呼び込むと、ニアサイドに速い球足のクロスを打ち込み、インサイドを取ったフェルラン・メンディが合わせてネットを揺らした。

「終わった」

 今シーズンはそう言われるマルセロだが、随所で魅せた技術は傑出していた。例えば、ダイレクトにノールックでゴール前のカゼミーロに出した左足のスルーパスは神がかっていた。スルーパスの角度やパスに対してのランニングの質など、「ワールドクラス」が横溢していた。

 久保も、中に入って状況を打開しようと試みた。しかし、パスが集まらない。そこで久保自身が自らインサイドにドリブルで持ち込み、ゴールに迫るが、味方と息が合わなかった。差を見せつけられた戦況が、チーム内にノッキングを引き起こしていたのかもしれない。

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