武田修宏、岡崎慎司、リトマネン...「ごっつぁんゴール」の名手とそのスゴさ

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 フジタ工業やベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)で活躍した野口幸司、2006年ドイツW杯で日本代表のメンバーだった大黒将志、さらにはウエスカで現役を続ける岡崎慎司も、この系譜に該当する。

◆岡崎慎司への日本とスペインの評価の違い。「泥臭い」「献身的」ではない>>

 海外で感覚派を代表するストライカーと言えば、古くは82年スペインW杯で活躍した2人のストライカーを思い出す。

 ひとりは西ドイツのクラウス・フィッシャー。セビージャのラモン・サンチェス・ピスファンで行なわれた準決勝の対フランス戦で、延長後半3分に、2-3の劣勢からオーバーヘッドキックを叩き込み、チームをPK戦勝利に導いた小柄なストライカーだ。ピエール・リトバルスキーが左の深い位置から折り返したボールを、ファーポストに走り込んだ長身FWホルスト・ルベッシュが、今度は頭で折り返す。このボールにゴール前で唯一反応したのがフィッシャーだった。

 フランスDF陣の思考が停止し、足が止まる中で、フィッシャーの身体だけが躍動していた。アクロバットで劇的な同点ゴールだったが、両者のコントラストが鮮明に描かれた瞬間でもあった。

 ゴール前の混戦でただ1人、いきいきとボールに反応しているように見える選手。故パオロ・ロッシ(2020年12月9日に亡くなった)も、同じような印象を抱かせる選手だった。82年W杯、サリアスタジアムで行なわれた2次リーグ最終戦イタリア対ブラジルといえば、ブラジル絶対有利と言われながら、ロッシのハットトリックで、イタリアがまさかの勝利を演じた一戦だ。

 その3点ともロッシらしいゴールながら、とりわけその真髄に迫るのは、3点目の決勝弾になる。2-2で迎えた後半29分。イタリアの右CKをブラジルDFがクリアすると、MFマルコ・タルデリがそのボールを引っかけるようにシュートを放つ。ゴール方向に飛んでいったグラウンダーのボールは、ある瞬間、グンと加速した、ように見えた。あまりに早すぎて何が起きたかわからなかったというのが、その時、スタンドで観戦していた正直な感想だ。

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