37歳を超えてなお充実の長谷部誠。「サッカー選手を超えた存在」

  • パトリック・クラインマン●文 text by Patrick Kleinmann
  • 鈴木達朗●翻訳、構成 translation by Suzuki Tatsuro

 今年はどうなるだろうか? 日曜午前に放送されるドイツで定番のサッカー討論番組『ドッペルパス』に、1月中旬、フランクフルトのスポーツディレクターを務めるフレディ・ボビッチが出演した。そのなかで、「本当は、今季限りで最後だと話し合っていたんだ」と話すと、さらにつづけて「ところが...」と付け足すことも忘れなかった。

 ボビッチは、今季の長谷部のプレーを見ているうちに、「もう1シーズンやれそうだ」と思い直したのだ。「長谷部のプレーは、本当に魅力的だ。毎年1月か2月に、長谷部との話し合いの場を設けている。これからどうなるか、ドキドキするよ」とボビッチはテレビの前で話している。

 このボビッチディレクターの判断には、アディ・ヒュッター監督も喜んで同意するだろう。オーストリア人のヒュッター監督は、長谷部のピッチ上のプレーに信頼を寄せ、重要なタスクを任せている。監督は、他の選手の見本となる長谷部を今季19試合中15試合に先発出場させている。

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 ここ最近では、3バックの真ん中のリベロとしてではなく、守備的ミッドフィルダーとしての起用がつづく。そして、長谷部自身のプレーはどうだろうか? 期待に応え、優れた活躍を見せている。まるで身体的には20代半ばのフレッシュさ、そして精神的には85歳のような落ち着きを見せている。数々の修羅場をくぐってきた長谷部のプレーは、落ち着き払い、思慮深く、そして戦略的な印象を強く与えている。

 その一方で、1月23日にアウェーで行なわれたビーレフェルト戦では、誰もが驚くような数字を叩き出した。この試合で最年長だった長谷部が、時速33.3kmのスプリントで、ピッチ上の誰よりもスピードのある選手になったのだ。試合後、長谷部自身も驚いた様子で、「まさか自分がそんなに足が速いなんて、僕自身も知りませんでしたよ」と笑った。

 身体的な面から見れば、この元日本代表選手が、ブンデスリーガのトップレベルの選手としてプレーをつづけることに問題はないはずだ。ここ数週間のフランクフルトは、ドイツ国内で最も成功を収めているチームのひとつだ。とりわけ、長谷部の前にいる前線の選手たちは、スペクタクルなプレーで輝きを放っている。

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