ザックジャパン時代から様変わり。日本人の欧州移籍トレンドを読み解く (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

 もちろん、ひと昔前の日本人選手の移籍傾向は違っていた。たとえば、移籍ラッシュとなった2010年W杯以降のザックジャパン時代を振り返るとわかりやすい。

 セレッソ大阪のJ2時代にすでに日本代表デビューを飾っていた香川真司(→ドルトムント/ドイツ)はある意味で特殊な例だが、W杯後にヨーロッパに旅立った川島永嗣(川崎→リールセ/ベルギー)、長友佑都(FC東京→チェゼーナ/イタリア)、内田篤人(鹿島→シャルケ/ドイツ)、岡崎慎司(清水→マインツ/ドイツ)、細貝萌(浦和→レバークーゼン経由→アウクスブルク/ドイツ)、槙野智章(サンフレッチェ広島→ケルン/ドイツ)、清武弘嗣(C大阪→ニュルンベルク/ドイツ)などは、いずれもJ1でそれなりの実績を積んだ日本代表選手たち。それが、日本人のヨーロッパ移籍の主流だった。

その移籍先も主要リーグに限られていて、まだセカンドグループのリーグが日本マーケット未開拓の時代である。2011年の夏にバイエルン(ドイツ)に青田買いされたG大阪の宇佐美貴史や、アーセナル(イングランド)からオファーを受けた宮市亮は稀なケースで、当時のマーケットでは、将来有望な日本人の金の卵の信用度はまだ低く、即戦力となり得る成熟した日本人選手こそが獲得ターゲットだった。

 それは2010年以前の時代から続いていた傾向であり、柿谷曜一朗(C大阪→バーゼル/スイス)、山口蛍(C大阪→ハノーファー)、武藤嘉紀(FC東京→マインツ)らがヨーロッパに渡ったアギーレジャパン時代以降も変わらなかった。

◆主力が流出。J1移籍状況で見極める戦力ダウン必至のチームワースト3>>

 変化の兆しが見え始めたのは、2018年W杯以降だ。当時西野ジャパンでレギュラーを張っていた選手のうち、Jクラブに所属していたのは昌子源のみ。そのほか、W杯ベスト16入りを果たした日本代表メンバーでヨーロッパを経験していなかったのは、植田直通、遠藤航、中村航輔、東口順昭、大島僚太の5人しかいなかった。

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