2021.01.20

一発退場メッシの前にも立ちふさがる。バスクはなぜ名GKを生むのか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Reuters/AFLO

 そんな土壌が、傑出したGKを生んだのか。

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 1980年代まで、スペインでもユース年代では芝生のグラウンドが整備されていなかった。土ではダイブすると痛みが伴い、正しいフォームが作ることができず、そもそも子供がGKになるのに二の足を踏んだ時代である。しかしバスクではビーチサッカーが盛んで、砂場でのGKのトレーニングが確立されていた。

 EURO1964で優勝したスペイン代表の伝説的GK、イリバルはサラウスでビーチサッカーチームに所属し、技を磨いた。またEURO1984で決勝に進出したアルコナダは、コンチャ海岸がホームタウンだった。彼らは「特別なトレーニングはしていない」と言うが、模範となるGKが出たことで、後進たちがその存在に憧れ、系譜が作られたのだ。

「秘密の特訓? 石段を駆け上がるとか、厳しかったですが、それはどこも同じですよ」

 そう説明していたのは、イリバルである。

「例えばアスレティック・ビルバオは、バスク人だけでチームを強くしなければならないのです(バスク人選手のみがプレーを許される純血主義をとっている)。限られていることはハンデと言えるかもしれませんが、逆に士気は高まるんですよ。"自分たちでどうにかする"という覚悟が生まれるし、"先輩たちの後に続く"という気持ちにもなるんです。おかげで、戦う集団としてひとつになれるんですよ。GK同士も結束が強い。ライバルではあっても、競い合う仲間というか......」

 スカウティングの充実も、バスクサッカーの根底にある。他に頼れない。その自立心や責任感も、GKというポジションでは武器になった。

 そしてバスク人GKは、あくなき探求心で自らの技をしつこく改善し続けられるという。

「現代のGKは、完璧であることが求められる。攻撃における最初の選手で、守備における最後の選手でもある。苦手なことがあってはならない。例えば足技が使えなかったら、今はトップレベルでプレーするのは難しいと思う」

 ケパはそう話していた。

「バスクはたくさんのGKを生み出してきた。自分も先人たちと比較されるけど、まだまだだと思うよ。でも、尊敬すべき存在がいるのは誇らしい気持ちになるよね。自分も恥ずかしくないように、と」