久保建英の前に「冬の移籍」の壁。救世主的な活躍が難しい理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 なぜ冬の移籍は失敗例が多いのか?

 冬の移籍市場で動くクラブの多くは、その時点で何らかの理由によって不調に陥っている。それを解消するために補強が必要となるのだが、有力な選手を獲得するのは難しい。そこで、他のクラブで放出リストにある選手になるわけだが、彼らはそのクラブでうまくいっていないことが前提としてある。端的に言えば、「プレーできていない」などの問題を抱えている。久保と同じタイミングでバルサからヘタフェに移籍することになったMFカルレス・アレニャも、今シーズンはほぼ出場機会がなかった。

 必然的に、冬の移籍は博奕となる。移籍する選手も一か八か。試合勘の問題もある。にもかかわらず、低迷するチームを牽引しなければならないのだ。

 特にテクニカル系の選手が本領を発揮するのは至難の業と言える。コンビネーションを使って崩すのが持ち味だけに、まずは周囲の信頼を勝ち取る必要があるが、時間は限られている。即効で結果を出せないと、脆さの方が目立ってしまい、すぐに戦犯として扱われる。ベテラン選手は実績でその猶予を伸ばせるが、若手はさらに難しい。

 単純にインテンシティをチームにもたらす老練な選手は、いくらか成功の見込みはつく。リーガでの象徴的な成功例は、エドガー・ダービッツだろう。2004年1月、当時、下位でくすぶっていたバルサに加入するや、守備のインテンシティや勝利のメンタリティをもたらした。たった半年の在籍だったにもかかわらず、経験豊かな力強いプレーでチームに浮力を与え、順位を劇的に上昇させ、黄金時代の下地を作ったのだ。

 しかし、こうした例は珍しい。

「ヘタフェは久保シフトで4-4-2を捨て、4-3-3を採用か。4-4-2だとしても、3番目のアタッカーとして起用されるのではないか」

 スペインメディアの間で、久保はそこまで期待を寄せられている。確かに、守備陣を打ち崩すだけの攻撃力はあるし、勝負を決められるかもしれない。アレニャをインサイドハーフに、左にマルク・ククレジャ、右に久保と、バルサ育ちの面子で戦う姿は、心を浮き立たせるものがある。

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