久保建英はヘタフェでフィットするか。柴崎を見切った指揮官の戦術は (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 では、久保はヘタフェでフィットするのか?

 ホセ・ボルダラス監督が率いるヘタフェは、端的に言えば「戦闘力」に特徴があるチームだ。

 フィジカルインテンシティを極限まで鍛えられた選手たちは、何より戦う気迫と覇気を感じさせる。前線からピラニアが獲物に食らいつくようにプレスを仕掛け、"出血に興奮する"ように周囲も連動。カウンターでは一気にボールを裏へ。一部では「アンチフットボール」と蔑まれたが、闘争によって勝ち点を積み重ねてきた。

 その練度のおかげで、1部に昇格した2017-18シーズンから3シーズン連続で8位以内と健闘し、常にヨーロッパカップ出場圏内を争っているのだ。

「一戦必勝」

 その精神は、ディエゴ・シメオネのアトレティコ・マドリードとも似ているかもしれない。勝利のためには、なりふり構わない。

 ところが、今シーズンのヘタフェは1月9日現在で16位(18位以下が降格)と低迷している。今年初戦のバジャドリード戦も本拠地で0-1と敗れ、スペイン国王杯でも2部コルドバに敗れ去った。これまでの執念やしぶとさは感じさせず、危機的な状況に追い込まれつつある。3シーズンにわたり主力の多くが、極端に強度が高いサッカーを続け、体力だけでなく精神的にもすり減り、明らかな停滞が見られる。2トップが得点を叩き出してきたが、そのハイメ・マタ、アンヘル・ロドリゲスの調子が上がらず、得点数はリーガで2番目に少ない状況だ。

「新鮮な空気」

 ボルダラスは、今のチームに必要なものを啓示的に語っている。久保は新風を吹き込むことができるか。

 久保はおそらく4-4-2の右サイドハーフとして、攻撃のリズムを変え、決定的な仕事をする役割を託されることになるだろう。今さら言うまでもないが、攻撃能力は申し分ない。ビジョンやスキルの高さはすでに実証済みで、局面での違いは見せられるはずだ。

 しかし、ボルダラス・ヘタフェはインテンシティを重んじるチームだけに、久保がフィットするのは簡単ではない。ビジャレアル時代と同じように、非力さや守備の不安に目をつけられる可能性もある。その場合、移籍は浮かぶ瀬となるどころか、堂々巡りに陥ることになる。

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