久保建英の元同僚の経歴がすごい。へこたれずに挑み続ける流転のGK人生 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

◆Jを席巻する韓国人GKに代わって、若手日本人GKが台頭し始めた理由>>

 筆者が話を聞いた2015-16シーズン、マノーロは2部ヒムナスティック・タラゴナでプレーしていた。当時、同チームには鈴木大輔(浦和レッズ)が所属。そのルポ取材で訪れていたわけだが、GKの"流転の経歴"には目を引くものがあった。

 マノーロはアンダルシアの雄であるマラガの下部組織で育ったが、経験が浅くトップチームに定着できないと知る。そこでレバンテのBチームで出場する道を選び、トップ昇格の足掛かりを作る。そしてレバンテでは4シーズン、1部と2部でゴールを守った。その座が脅かされるや、2部カルタヘナへ移籍し、再びスタメンを確保する。挑戦に飽き足らず、キプロス、ギリシャに打って出るものの、そこで挫折し、2部B(実質3部)タラゴナで再出発。すると、たった1シーズンでタラゴナを2部へ昇格させ、次のシーズンには1部昇格プレーオフを争うまでになった。

「不屈のキャリアですけど、どんなGKが理想ですか?」

 そう訊ねた時、マノーロは明るい声で答えた。

「理想なんかよりも、今を楽しむことしか考えていないよ。どうなるかなんて考えても、そうなるものではない。サッカーはそういうスポーツで、何が起こるかわからないからね。充実した今を過ごすだけだ」

 究極的な享楽の発想だった。過去でも、将来でもない、今のみに真実がある。今の積み重ねが、自分なのだ。

 今を追求してきた道のりは、振り返ると平坦ではない。しかし、へこたれずに挑むことで、光射す舞台にも出られた。

 2017-18シーズン、マノーロは当時2部Bマジョルカに入団し、最少失点でチームを2部へ昇格させた。2018-19シーズンには最後の番人として立ちはだかり、1部へ上がった。そして昨シーズンは、豊富な経験で身につけた技量を見せつけた。容易にボールをこぼさなかったし、反応は俊敏で、パンチングも強かった。結局、2部降格を回避させることはできなかったが、今シーズンは昇格を争うチームで最後の砦となっている。

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