レアルで先発抜擢、ミス連発、お払い箱...第2GKという生き方 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by MarcaMedia/AFLO

◆Jを席巻する韓国人GKに代わって、若手日本人GKが台頭し始めた理由>>

 2012-13シーズン、レアル・マドリードの監督を務めていたモウリーニョは、ファーストGKのイケル・カシージャスのプレーに不満を覚えた。そこでそのポジションをはく奪し、セカンドGKとして3シーズン目だったアントニオ・アダン(現スポルティング・リスボン)に与えている。カシージャスは人気選手だけに、論議を呼んだ。

 ようやく試合に出られるようになったアダンだが、針のむしろだった。スタジアムの観客はほとんどが反モウリーニョで、カシージャスを支持。狭間に立たされてのプレーは、焦れば焦るほどミスが出た。いつもはやらないポカを連発し、無残な姿を晒すことになった。

 アダンは数試合、さらし者にされた後、モウリーニョがセビージャのGKだったディエゴ・ロペス(エスパニョール)を獲得し、再びセカンドGKに戻された(カシージャスは手首を骨折)。そしてシーズンが終わると"お払い箱"になった。

「モウリーニョに利用されたとは思っていない」

 アダンは言う。

「最高の選手たちと、自分はプレーすることができた。世界最高GK(カシージャス)のサブとして3年間を過ごし、成長し、先発する機会を得たんだ。結果は思うどおりにはいかなかったけど、何ひとつ、恥ずべきところはない」

 その後、アダンはセリエAのカリアリに新天地を求めるがフィットせず、半年でベティスへ移籍し、2部に転落した。しかし、そこからが下積みを重ねてきた男の面目躍如だった。正GKとして1シーズンでベティスを1部に復帰させ、チームキャプテンも任される。3シーズン、1部で活躍し、スペイン代表入りまで囁かれるようになった。そして2018-19シーズン、強豪アトレティコ・マドリードに移籍している。

 アトレティコには2シーズン在籍したが、欧州最高GKヤン・オブラクの牙城を崩すことはできず、再びセカンドGKの座に甘んじた。しかし今シーズンからポルトガルの名門、スポルティングへ移籍。レギュラーGKとして好セーブを連発し、リーグ首位を走るクラブに貢献している。

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