久保建英の周囲にできつつある移籍の流れ。だが目指すべきは残留だ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 ヨーロッパリーグでは先発で活躍しているし、交代出場のカードとして重要であることは間違いない。それだけでも、シーズン前半戦としては及第点だ。昨シーズンまで所属していたマジョルカは残留が目標のクラブで、変化に苦しむのは当然なのだ。

「久保のこのようなテクニックを見る限り、もっと出場機会が与えられるべき」

 第13節の先発機会を与えられたベティス戦、久保が右サイドで2人と対峙しながら左足のヒールを使ったパスで相手を無力化した技巧を、スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は激賞している。プレーセンスはリーグでも屈指。ファンやメディアからの人気は依然として根強い。

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 にもかかわらず、なぜ先発を取り切れず、移籍報道が熱を上げるのか。

 メディアに賞賛されたベティス戦後、2試合連続で出場機会が与えられていないが、実はこの試合で、気になる戦術的判断ミスがあった。50分過ぎ、自陣でFKを与えた時、久保はペナルティアークで待つ相手選手に付いていたが、キッカーがボールを蹴る瞬間、そちらに向かって近づいている。入れられたボールは味方がクリアしたが、こぼれ球を拾われてエリア外から蹴り込まれた。

 日本の指導者は、セットプレーの守備でペナルティアークに人を置き、ミドルシュートの蓋をする、ということに頓着しない。これは国内と海外でミドルシュートの精度の違いもあるか。スペインの指導者は、ペナルティアークを相手に明け渡した場合、烈火のごとく怒る。戦術的な原則を破ることが、失点に直結するからだ。

「久保はまだ学ぶべきことがある」

 そう語るウナイ・エメリは戦術家として有名な監督で、執拗なほどにディテールにこだわる。セビージャでヨーロッパリーグ3連覇を達成した時も、組織を重んじていた。

 ビジャレアルの監督、クラブも、久保の放出に動いているのは事実だろう。250万ユーロ(約3億円)のレンタル料は、決して安くはない。どれだけ活躍しても買い取りオプションはなく、1年で終わり。これ見よがしに下部組織出身の若手を起用しているのは、彼らがクラブの財産だからだ。

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