2020.12.14

マネが持つストリート育ちの強みとは。型破りなのにチームのために走る

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

◆現代サッカーの一大派閥「ラングニック流」。その戦術を徹底分析する>>

 ストリートフットボーラーはクセが強い。一方で型にはまっていない。

 足にボールをくっつけたまま、グルグル回転して進んでいくドリブラーを見たことがある。アフリカ出身のようだった。教えられていないのでオリジナリティが強烈で、ジダンのルーレットもこの類だろう。

 遊びと言っても不真面目とは限らない。ガーナで見た子どもたちの草サッカーにはギャラリーもいて、その見物人を目当てに物売りもいた。見物客はおそらく賭をしていたと思う。

 裸チーム対服を着たチームの対戦は真剣そのもので、スライディンタックルもバンバンやる。判定を巡って大いにもめた挙句、レフェリーの少年が泣き出して帰ってしまったので試合終了となったが、レベルは高かった。

 子どもは放っておけば勝ちたがる。優秀なストリートフットボーラーは闘争心に溢れ、攻守いずれもこなし、スタミナもある。戦術は知らなくても知恵がある。不測の事態への対応力が高い。

 マネは無類なゴールゲッターだが、それだけにとどまらない。アシストも多いし、守備力もある。リバプールが守備を増員したい時、3トップから最初に引くのは最も守備力のあるマネだ。

 両足が使えて、スピードは抜群。何より賢い。教えられた賢さではなく、フットボーラーとして感性のよさ、言わば地頭のよさがある。

 20歳のマネを発見したラングニックは独自のサッカー観で知られていて、現在のリバプールにつながる最先端の戦術家だった。そのラングニックが惚れ込んだマネが、ストリートフットボールで育った選手だったというのは面白い。既存の育成システムで育てられた選手にないものを持っていたのだろう。

 マネのプレーは型にはまっていない。ゲームのなかに溶け込むように効果的なプレーをするのだが定型がない。何をするかわからず、たぶん本人にもその瞬間までわからないのではないか。

 抜群のチームマンだが、それ以上に即興的でとらえどころがない。ストリートフットボーラーの強みを最大限に生かしている、フットボールマスターである。

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