ハリー・ケインの進化が止まらない。まさに万能型センターフォワード (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 MFがDFラインに吸収されてしまうのは、昔から悪手と言われていた。いかにラインを密にしようと、その手前が開いてしまうからだ。

 しかし、もちろんモウリーニョ監督に抜け目はなく、DFライン手前のスペースには、4-2-3-1のトップ下で起用されているタンギ・エンドンベレがしっかり引いてくる。エンドンベレはもともとボランチの選手なので、守備力は確かだ。エンドンベレとホイビュルクまたはシソコでバイタルエリアを守る。これで足りなければCFのケインも加わる。

 一方、サイドハーフのソン・フンミンとステーフェン・ベルフワインはそれほど引いてこない。彼らも数が足りなければ引くけれども、サイドのスペースはすでにSBとボランチのふたりで埋めているので、引く必要がそれほどないのだ。

 かくして、相手ボールに対して「バス」が横付けに駐車されるわけだが、そこからのカウンターアタックには切れ味がある。ボールを奪うや、ソンとベルフワインが快足を飛ばして相手DFの背後を狙う。

 そこへ正確なパスを供給するのが、CFのはずのケインである。

<まだまだ進化する万能型CF>

 いわゆるファルソ・ヌエベ(偽9番)が、いつも本当に「偽」とはかぎらない。

 元祖ファルソ・ヌエベのアドルフォ・ペデルネラから、役割を受け継いだアルフレッド・ディ・ステファノは、9番としても強力だった。

 ペデルネラは元インサイドFWで、ディ・ステファノは元ウイング。たしかにそれぞれの出自はCFではないが、ディ・ステファノの場合は得点力が図抜けていて、さらにプレーメーカーとしても抜群という、才能があり余っているタイプだった。

※アドルフォ・ペデルネラ...1940年代にアルゼンチンのリバープレートで活躍。
※アルフレッド・ディ・ステファノ...アルゼンチン出身。50~60年代のレアル・マドリードで活躍

 ファン・バステンにファルソ・ヌエベを勧めていたクライフは、「ディ・ステファノの再来」と呼ばれた万能アタッカーである。クライフのあとは、フランチェスコ・トッティ(イタリア代表、ローマで活躍)が偽9番を復活させた。そのあとは、この役割を別次元にしたリオネル・メッシがいる。

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