モウリーニョの必勝パターンを分析。トッテナムは優勝のチャンスあり (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 決勝ではモナコを3-0で破る快勝だったが、それ以前にポルトが3得点したのはグループリーグのマルセイユ戦だけ。決勝の3点も、この試合で放ったシュート3本がすべてゴールしての3得点である。

 この時の13試合の戦績は7勝5分1敗。引き分けが多いが、負けたのはグループリーグのレアル・マドリード戦だけだった(1-3)。そして7勝のうち、2点差で勝ったのは準々決勝のリヨン戦と決勝だけ。あとはすべて僅差勝負である。

 戦力的に図抜けているわけでもない。しかし、すべての試合を均衡状態にすることができる。そして僅差の勝負に勝てる。監督の手腕が評価されるはずだ。

 モウリーニョ監督はよく「守備的だ」と批判されてきたが、およそビッグクラブを率いていたこともあり、守備的なプレーばかりしていたわけではない。ただ、格上や同等との対戦では堅守速攻をメインにしてきたので、守備的な印象が強いのだ。ポルトも守備的ではなかった。

 面白いのは、ポルトは堅守ではあったけれども、速攻のチームではなかったということだ。言わば「堅守遅攻」である。

 モウリーニョの編成は中心軸をしっかりつくる。ポルトではGKにビトール・バイーアがいて、CBはリカルド・カルバーリョとジョルジュ・コスタ。菱形の中盤の底にはコスチーニャ、このポジションには必ず守備力のある選手を使う。トップ下にデコ(以上ポルトガル)、エースストライカーはベニー・マッカーシー(南アフリカ)だった。

 安定したGKとCB、守備力のあるアンカー、創造性のトップ下、得点力のあるストライカーという縦軸をしっかりつくる。ある意味、極めてオーソドックスな編成だ。そこに枝葉になる選手を組み合わせ、攻守にバランスのとれたチームに仕上げる。

 ポルトガルらしく、ボールポゼッションのうまさはポルトの特徴だった。格別なFWがいないので、速攻にそれほどの威力がないかわりに、堅守で奪ったら容易に失わない。

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