2020.11.17

カタカナ表記が定まらないチェルシーの名手。クロスのクセが強い!

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 左利きのよるインスイングのクロスでは、かつてクリス・ワドル(イングランド)やゲオルゲ・ハジ(ルーマニア)といった名手がいた。最近ではリオネル・メッシ(アルゼンチン)もそうだ。この3人のクロスは、カーブをかけて味方にピンポイントで合わせる親切なキックだった。

 利き足は右だが、フアン・ロマン・リケルメ(アルゼンチン)の左からのクロスが、ツィエクに近かったかもしれない。リケルメのキックは足の振り方から、予想されるよりボールが左へずれて飛ぶ独特の軌道。CKやFKでも威力を発揮したクセのあるボールだった。

 相手は触れないので、味方が理解していればフリーでシュートできるチャンスになりやすい。

<意外性のあるボールの持ち方>

 得点に、アシストにと、ゴールに直結するプレーで評価を高めているツィエクだが、正直まだおとなしくやっている印象だ。

 右サイドと、ひとつ中に入った右のハーフスペースを往復しながら、チームのバランスを崩さないように控えめにプレーしている。アヤックスの時も同じポジションだったが、その時を振り返るとツィエクはこんなものではない。

 本来は、もっと独特の格のようなものがある選手なのだ。細身で長い手足。ボールを動かす時の幅、パスの時のリリースの雰囲気が普通の選手とどこか違う。

 リーチがあるだけでなく、ボールを蹴ったり止めたりする位置が違う。体の中心からずいぶん離れたところにボールがあるのに、蹴れてしまう。自分とボールの関係性においてけっこうクセが強く、それが意外性を生んでいるのだ。

 オランダで活躍しているころから、安易なボールロストの多さが欠点として指摘されていた。クセの強さも原因かもしれないが、たんに集中力がない感じもする。すごく繊細な時と雑な時が混在していて、よくわからない選手だった。未完の大器という雰囲気だ。

 しかし、ツィエクももう27歳だ。チェルシーでは完成されたアタッカーにならないといけない。それもあって少しおとなしく見えたのかもしれない。