名将リッピが駆使した「新種のカテナチオ」には1−0がよく似合う (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

 リッピ監督が2度目にユーベを率いた2002-03シーズンもファイナリストだった。そして、この4度目の決勝もミランにPK戦で敗れている。4回のファイナルで勝ったのは一度だけ。準優勝3回のシルバーコレクターなのだ。

 ユベントスはもともと決勝に弱い。9回決勝に出て7回負けている。準優勝7回は歴代1位。逆にミランは優勝7回、インテルは3回と、ユーベより優勝回数が多い。国内リーグはユーベのほうが優勝回数は多いので、CLに関しては逆転現象が起きている。

 それもこれも決勝に弱いからなのだが、ユーベには勝負強いイメージしかない。このイメージと結果のギャップは、リッピとユベントスを解くカギになる。

<フィジカルなチーム構成>

 リッピ監督時代のユベントスといえば、強靭なフィジカルが特徴だった。

 優勝した1995-96シーズンのCL決勝は、ディディエ・デシャン(フランス)、アントニオ・コンテ(イタリア)、パウロ・ソウザ(ポルトガル)がMFの主力だ。3人とも現在は監督として活躍中だが、現役当時は運動量が豊富な職人的なディフェンシブハーフだった。

 次のシーズンはデシャン、アンジェロ・ディ・リービオ(イタリア)、ヴラディミール・ユーゴヴィッチ(セルビア)の3人が主力。こちらもほぼ同じ性格の中盤である。ボールハンター3人の中盤は、現在のリバプールと似ている。

 中盤からぎゅうぎゅうとプレスで締め上げ、奪ったボールは縦に素早く展開。前線のスターアタッカーたちがカウンターで仕留める。

 2002-03の決勝は4-4-2だったが、4バック全員がセンターバックの構成だった。リリアン・テュラム(フランス)、チロ・フェラーラ(イタリア)、イゴール・トゥドール(クロアチア)、パオロ・モンテーロ(ウルグアイ)という頑健屈強の4人を並べていた。

 MFもエドガー・ダーヴィッツ(オランダ)、アレッシオ・タッキナルディ、ジャンルカ・ザンブロッタ、マウロ・カモラネージ(以上イタリア)といった走り屋ばかり。ミランとの決勝ではエース格のパベル・ネドベド(チェコ)が出場停止で欠場していたが、ネドベドも豊富な運動量で有名なサイドアタッカーである。

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