2020.11.10

日本人がCL決勝出場に最も近づいた日。
バイエルン、本拠地優勝ならず

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

「当初は全天候型の開閉式ドームスタジアムを造る予定でした。スタジアムの天井を、ふわりと浮くツェッペリン号のような飛行船を使って開閉する計画で進んでいたのですが、その会社が倒産してしまって......」

 傍らにいたスタジアムの広報担当者は、大真面目にこう続けた。

「日本の会社がこの計画に賛同し、手を挙げてくれることを切に祈っています」

 スタジアムの天井から飛行船のようなふわりとした浮遊体が、舞い上がれば屋根は空き、着地すれば閉まるという、まさに非現実的なその映像を、実際にデスクトップのモニターで見せられると、そうした夢に溢れる計画を大真面目に考えている彼らに、拍手を送りたくなっていた。

 スタジアムに結局、屋根は付かなかった。飛行船をふわりと上下させる計画は幻に終わった。

 完成は2005年。その年の9月17日に行なわれたチャンピオンズリーグ(CL)、バイエルン対クラブ・ブルージュが、筆者にとって初めて観戦した試合になった。

 2006年ドイツW杯では、開幕戦(ドイツ対コスタリカ)をはじめ6試合が行なわれた。開会式を最新式のアリアンツ・アレーナで、閉会式を伝統と格式のあるベルリン五輪スタジアムで開催するというその対照的なコントラストがイカしていた。新しいドイツと負の遺産を抱えた古いドイツ。暗い過去を忘れることなく未来に向かおうとするドイツの姿勢を表したものだとは、取材した大会関係者の弁である。

◆「稲本潤一が語るドイツW杯~史上最強チームの崩壊」>>

 バイエルンとアリアンツ・アレーナの関係が、最も濃くなった瞬間は2012年5月19日。この日行なわれたCL決勝は、バイエルン対チェルシー戦だった。

 決勝進出チームの本拠地でCL決勝が行なわれたのは、この時が初めてだった。チャンピオンズカップ時代を加えても、1956-57シーズンのレアル・マドリード対フィオレンティーナ(サンティアゴ・ベルナベウ)と、1983-84シーズンのローマ対リバプール(ローマ・オリンピコ)を合わせた3度しかない。ローマはリバプールに敗れているから、2011-12シーズンの決勝は、1956-57シーズン優勝のレアル・マドリード以来、55シーズンぶりの快挙なるかに注目が集まった。