2020.11.10

日本人がCL決勝出場に最も近づいた日。
バイエルン、本拠地優勝ならず

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 このアイデアは、ヘルツォーク&ドゥ・ムーロンが、ザンクト・ヤコブ・パルクの次に手がけることになったアリアンツ・アレーナにも採用された。スタジアムの外装は、薄さ0.2ミリのポリカーボネートのパネルですべて覆われることになった。

 もっとも、ヘルツォーク&ドゥ・ムーロンによるこのパネルを使った外装は、アリアンツ・アレーナが完成する2年前(2003年)、日本で目にすることも可能だった。国道246号線(青山通り)から根津美術館に向かう道沿いにあるプラダ青山店ビルである。アリアンツ・アレーナにも、このビルと同じ趣向が息づいている。

 ファッションの最先端を行く建物と同じアイデアを活用したスタジアム。ポップでカラフル。かつ近未来的。プラダ・スタジアムと呼びたくなる洒落っ気を感じる。

 先に完成したバーゼルのザンクト・ヤコブ・パルクを見学して、度肝を抜かれた筆者は、建設中のアリアンツ・アレーナに向かい、ダメもとで建築現場の作業小屋を訪ねた。ヘルツォーク&ドゥ・ムーロンのどちらかに会えないものかとの願いは叶わなかったが、ティム・フーベルさんというドゥ・ムーロン氏の片腕として知られる建築士が、快く迎えてくれた。

「世界各地のスタジアムを見て回った結果、従来とは大きく異なるコンセプトを打ち出す必要性を感じました。イメージしたのは客席がフロアに対してほぼ垂直に立つオペラ専用の劇場です。観衆に舞台をできるだけ近い場所で見せたいと考えました」

 それはミュンヘン五輪スタジアムとは真反対の眺望を意味していた。

「外観はラウンド感のある籐の篭、壺、さらには提灯をイメージしました。密閉性に優れた器の中に観衆をしまい込む。これがアリアンツ・アレーナのコンセプトです」

 そう言いながら、デスクトップのモニターでスタジアムの青写真を次々に映し出した。夜になるとスタジアムはライトアップされ、提灯のごとく柔らかな光を放つのだった。

 フーベルさんはこう続けた。