2020.10.29

超先鋭的。アーセナルのアルテタ監督の難解な戦術を読み解いてみた

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

現代サッカーの一大派閥「ラングニック流」の戦術を徹底分析>>

 ハイ、ミドル、ローの3つの守備局面でそれぞれシステムが変化する。守備でもチームとしてやろうとしていることは明確なので、逆に用途に合わせてシステムが変化している。

<トータルフットボールの末裔>

 シティとアーセナルは、兄弟と言っていいぐらい戦術的な思想が似ていた。

 まずパスコースをつくる。そして攻撃で「幅」をとり、「中間ポジション」に立ち、可能なら「裏」を狙う。なので、崩し方はリプレーのように繰り返されるが、関わっている選手は同じではない。狙いが決まっている分、それを実現するには選手が流動化したほうがむしろ都合がいいのだ。

 シティとアーセナルは、いわばトータルフットボールの末裔である。ポゼッションとポジションのサッカーが最も進化した形を示している。先進性という意味では、ペップよりアルテタのほうが上かもしれない。シティは幅をとる選手は決まっていたが、アーセナルはそれさえも変化させていた。

 ただ、試合は1-0でシティが勝利している。先鋭的だからと言って、それだけで強いわけではない。アーセナルのビルドアップはまだ粗いところもあり、けっこう対戦相手から狙われたりもしている。

 しかし、アルテタ監督は誰よりも斬新なチームづくりに挑戦している。アイデアだけならすでにチャンピオンかもしれない。真のチャンピオンになれるかどうかは、まだ何とも言えないが、読み解きの面白さは抜群だ。ただの推理小説なのか偉大な発明かは、時間が教えてくれるだろう。

ミケル・アルテタ
Mikel Arteta Amatriain/1982年3月26日生まれ。スペイン、サン・セバスティアン出身。ユースではバルセロナで過ごし、現役時代はエバートンやアーセナルなどでMFとして長くプレー。2016年に引退後、マンチェスター・シティのアシスタントコーチ。2019-20シーズンからアーセナルの監督を務めている。

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