ハリルホジッチは日本の周回遅れを危惧。実は先見の明を持っていた (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

スペインの知将がコートジボワール戦を分析>>

 勝利至上主義者で、戦術的にはプラグマティスト的だった。ボールポゼッションを基盤にした日本のスタイルがアジア予選で行き詰まりをみせると、躊躇なく方針を転換している。世界の動向変化にも鋭敏だった。

 Jリーグの「デュエル不足」を何度となく指摘していたのは、欧州から来た指導者はだいたいそう思うところだが、それ以上に日本のサッカーがこのままでは周回遅れになるという危機感を持っていたからだ。

 ハリルホジッチが日本代表に導入しようとしたのは、現在のリバプールやバイエルンのスタイルと言っていい。ある意味、先見の明はあった。ところが、それは日本選手の資質や嗜好性にまるで合っていなかった。

 みすみす相手ボールになるとわかっていてロングボールを蹴らなければならない意味が、当時の選手にはまったく理解できていない。それで効果があるならともかく、むしろ墓穴を掘るような展開なのだから、監督の方針に疑問を抱くのも当然と言える。

 ハリルホジッチ監督も、アレルギー反応が出るのは予想していたに違いない。そこをどう修正するかにも自信はあっただろう。しかし、もうその時点で選手側からは見限られていたわけだ。監督か選手か、JFAは選手を温存したのだと思う。あの段階で選手の大半を入れ替えるギャンブルは打てなかった。

 ブラジルW杯でアルジェリアを率いた時は、試合によってかなりメンバーを入れ替えていた。ラマダンの影響もあったかもしれないが、対戦相手に応じてバランスを変えていた。一方で戦い方の基盤のところは不変で、システムもほとんど変えていない。

 代表チームのつくり方としては理にかなっていて、基盤がしっかりしているので大胆な変更も効く。ロシアW杯で日本を率いていたら、勝負師としてどんな采配を見せていただろうか。

 それを見たかった気もするが、日本代表の場合は基盤のところがかなり壊れてしまっていたので、どのみち難しかったのではないかと思う。

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